雪、野毛坂スタック

 昼ごろだったか、女からメールがあって目を覚ました。雪なので同窓会が取りやめになった云々という内容だった。窓を空けてみれば、外は雪。

 しかしおれは出かけねばならなかった。どこへ? 図書館へ。年末に借りていた本について、読了していないものがあって、それでも確か10日に図書館のネットのシステム改修が終わるはずで、そのときに延長すりゃいいやと思っていたのだ。が、なにかトラブルがあったらしく、ようやく繋がった昨夜調べてみたら、一冊に次の予約が入っていた。延長不可のステータスになっていた。結果、返却期限を過ぎた状態になっていて、義理と人情と矜持というか、義務感と「雪降ってるから外に出たい」という思いで、おれは図書館に行くことにしたのだった。


 しかしまあ、けっこう積もってるくらいの雪ですぜ。でも、ネットで横浜市交通局のサイト見てみれば(これもリニューアルしてるね、あんま見ないのでいつからかしらんが)、その時点で運休になっているのは、弘明寺の坂のある方の路線だけ。まあ、走ってるんじゃね? くらいの感じでバス停へ歩き出す。

 それで、何路線か来るバス停まで行ってみたら、満員に近いのが一台来た。乗れないかな? と思ったら、アナウンスで「後ろのドアからもご乗車できます」と。え、そうなの? 運賃どうすんの? と思いつつ乗り込む。

 結局、車内は空かず、桜木町のバス停について、降りると同時に前方にダッシュして「後ろドアから乗ったから運賃を」といってSUICAでタッチして支払った。この点、均一料金というのは便利だ。しかし、目視でもちょっと先のランドマークタワーが見えない。図書館、やってんの? ……と言いつつも、返却ポストあんだろうという予防線くらいは考えている。というか、交通機関が麻痺しても歩いて帰れるという計算が立っているから出てきたのだが。

 それにしたってこりゃあという感じで。こんな日に外に出ているのは、横浜市中区の写真ブロガーぐらいじゃないかと思ったら、それでも、わりと人はいて、たぶん成人式の晴着姿の子とかもいて大変だな、と。あとはなぜか中高年というかお年寄りの姿もあった。こういってはなんだけれども、あなたがたは家にいたほうがいいんじゃないのかと、余計なお世話を言いたくもなる。それでも、風間杜夫の落語会に来たかったんだ、と言われりゃそれまでだが。え、風間杜夫って落語やんの?


 そしてようやくの野毛坂。ちなみに、ここまででおれはレンズキャップを紛失しております。そして、上り坂の交差点先で一台の大型トラックが立ち往生しております、と。これ、片側2車線じゃなかったらどうなってたんだろ、と。中から運転手が出てきて、チェーン装着のようなことなどしていたが……。

 図書館で返却、そしてまた本を借りる。「本日は3時で閉館させていただきます」というアナウンスとともに、京浜東北線が止まってることなど知らせてくれる。
 ところで、館内の検索機も新機種になっていて、プリントアウトされる資料も変わっていた。「調査公開/081.6/可/利用できます」。よくわからない。調査公開ってなんだろ? と、検索機会の前にいたスタッフに尋ねると、その件はと「書庫から本を出してくれるのを頼むカウンター」に連れて行かれる。おそらく、機械とシステムの人なのだろう。で、聞いてみればこれ、本棚(書架といった方がいいのか?)に出ている状態ですよ、とのこと。で、「調査公開」というのは3階のことらしい。ああ、そういう。前のシステムだと何階ってのが出たけど、ジャンル(?)で出るようになったのか。借りようとしている本が社会学か隨筆かよくわからんが、人文科学の方かと思っていて、あまり使わぬ3階とは思わなかった。あの階は行政資料や雑誌・新聞がたくさんあって、端っこに「誰それの全集」の棚があんだ。そういうことか。まあ、慣れるまでのことだろうけど、階数出してくれると……ちょっとうれしいかも。

 で、帰り道、まださっきの大型トラックはスタックしたまま。どうすんだろ。ほかにも、赤信号からの発進でタイヤ空転させる車とかあって。でも、なんか嬉々としてぶっ飛ばしてくRVみたいなのもあって、おれを避けて適当に事故ればいいのにとか思う。あと、この天気でも自転車移動を敢行する人間というのは、銀輪部隊出身者かなにかだろうか。
 とか他人事言ってるおれも大雪の中好きこのんで出歩いてる物好きであって、田んぼの様子を見に行って川に流されるタイプと言わざるをえない。が、そんなおれでもしんどいのでバスで帰ろうと思って桜木町のバスターミナルへ。行列ができている。しばらく待つが来ない。iPhoneで交通局にアクセス。なかなか繋がらないが、ようやく最新情報につきあたる。おれの乗りたい系統は「一部区間運休」(だったかな)とのこと。どういうこと? もし待ってて来たところで、おれの行きたいところまで行かないなら無駄だし、桜木町がどうなのかもわからない。「お問い合せはこちら」と電話番号があったので、駄目もとでかけてみると、案の定通話中。おれは歩いて帰ることにした。

 もう写真撮る余裕とか無いし、防塵防滴だかに強いα77じゃねえし。ただ、コロンビアの登山靴(一歩手前?)みたいなのはたいへんよかった。雨の日用に持ってたんだけど、たんに濡れた人工路面の上だと普通に滑るんだけど、ザクザクと積もった雪を歩くときの安定性ときたらない。靴が「だんな、おれの本領はこのあたりですぜ」って言ってるみたいだった。
 イセザキモールまで来たら家は近い。ほとんど人は歩いていないのに、雪の中なんらかの呼び込みを一生懸命やっているなんらかの店の店員の女性などいてたいそう感心するが、はたして歩くのに精一杯でなんの呼び込みかわからなかった。

 パチンコ屋は元気に営業中だった。外から覗くと、明るく暖かそうな店内に、くつろいだ客、にぎやかな音楽、変な話だが極寒のマッチ売りの少女が豪邸のパーティを見て放火する気持ちがわかったような気になる(え、そんな話だったっけ?)。思わずふらふらパチンコ屋に入ろうかというくらいのものだ。まあ、パチンコもパチスロもやり方をしらないので入りはしなかったが。
 そしておれは、会社に来て小休止とばかりに野毛のあおばで買ったカップ麺と惣菜を食い、温かいコーヒーを飲み、カメラを拭いたりした。そしてこの日記を書いたら、いざというときの置き靴(メレルの完全防水。明日の朝用)を持って帰ろうと思っている。カメラはどうしようかとか考えてて、まったく室内は暖かく、外に出る気もしないというのが本音なのだけれども。

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