元気になると死ぬ


 「正月休み長かったじゃないですか。それで、家にいるぶんにはいいかと思って頓服用のやつとかやめてみようと思ったんですけど、一人でいても異様な不安感が襲ってきて飲まなきゃあかんかったですね。それで、仕事はじまっても、なんていうのか、ボーっとするというか、ぼんやりモヤがかかったみたいな、なんていうのか、集中力もないし、最初に病院来たときとまではいかないですけど、なんかすげえ調子悪いんすよ。……なんか元気になる薬ないっすかね!?
(意訳:SNRIとか処方してみてくれね?)
 「うーん、知ってると思うけれど、SSRIとかSNRIとかね、ノルアドレナリン……云々。でも、あなた希死念慮強いでしょ。製薬会社から自殺の危険性が警告されてるし、なんとかいまのままでいけませんかね」
(意訳:さっきお前「希死念慮はまだあるか」の質問にすげえはっきりイエスって言ってたじゃねえか。それに、最初の方の問診で宅間守秋葉原の加藤とかへの共感語ってんのも忘れちゃいねえよ)
 「はあ、じゃあしばらくこれで様子みます」
(意訳:仕事できないところまで行ったら、円高のうちにまたタイ製のゾロを個人輸入するか……。法律変わってねえよな?)

 というわけで、おれは元気になると死ぬ。現行の抗うつ剤抗不安薬と旧名アルマールを断てばもっと動けない。このぼやけたスペックで死んで生きなければならない。まあ、生きなければいけない道理もないが。ただ、生きたいと思えば働かねばならず、頭も手も動かせなければいけない。おれ程度の軽症ではなんの支援助けもないし、自分の脳をどうにかハックするしかない。まあ別の医者で症状の偽報告でもするという手もある。ただ、おれは新しいところに行くのが怖いんだ。ひどく億劫だ。だったら通販というのは便利なものだ。メタンフェタミンとかだともっと効果覿面かもしれないが、どこで売ってるのかしらないし、買う金も無い。さて。
 さて、しかし、「元気」になったところで、おれは生きていてなにが楽しいのか。せいぜい酒に酔っている間だけは楽しい気持ちでいられたような気になっていたが、最近はもう薬との相乗効果か阻害効果か、酔わないし、そのうえ眠くなるだけだ。アホみたいだ。それで、寝るときはSAS用のマウスピースが欠かせない(痰が軽く絡むって話を前回くらいにしてて、ムコダイン処方されても効かず、べつの耳鼻科行ってムコソルバン処方されても効かず、「こないだおまえアドエア処方するって言ってたよな? 出してくんね?」って言ったら専門医でって腰引けやがった。ところで耳鼻科じゃなくて呼吸器科が正解か。薬屋の薬剤師のお姉さんは逆流性胃炎のケースを指摘するが、もうどうでもいい)。睡眠にすら背かれている。最悪だ。浅い眠りのアホさ加減。おれが死んだら、死体の口にマウスピース突っ込んで焼いてくれ。いや、棺桶に入れられるようなまともな処理もないか。横浜だと犬や猫と一緒にまとめて焼かれて、その灰からコンクリートブロック作ったりするのだっけ。まあ、どうでもいい。