『映画秘宝』、仁義なき戦い、金子信雄、父と母のお見合い

映画秘宝 2013年 04月号 [雑誌]

映画秘宝 2013年 04月号 [雑誌]


 おれはついこのあいだ、『仁義なき戦い』シリーズを見終えた。いまおれの手元には笠原和夫の『破滅の美学 ヤクザ映画への鎮魂曲』と『妖しの民と生まれきて』がある。ようするに『仁義なき戦い』脳になっているといっていい。そこにきて、『映画秘宝』が『仁義なき戦い』の特集をするという。くらしの役に立つ悪人大名鑑が載るという。ようはBlu-rayボックスが発売されるタイミングだった、ということにすぎないのだが、こういうことがあると、おれはわりと単純に「世界はおれのために回っているんじゃあないか」などと思ってしまう。悪くない。
 話は急に変わるが、父と母の見合いの話をする。正月だったか、おれが「いま、『仁義なき戦い』シリーズを見ている。金子信雄がいい」などという話をすると、母曰く、「私のお見合いは金子信雄の経営する料亭だった」だと。初耳だ。そうか、金子信雄といえば楽しい食卓か。料亭だかレストランだかやっていてもおかしくはない。
 して、知り合いの知り合いくらいの……くらいの遠さで見合い相手、すなわち父と会うことになったため、なぜかわからぬが家族以外の人間がゾロゾロと来ていたそうである。そこで世話人をし、のちに仲人になったのが宝島社の現社長である。昔、父から聞いた話だが、宝島の編集部に読者から差し入れが届けられ、ダンボールを開けてみたらいっぱいの大麻だった、なんてこともあったらしい。真偽は知らない。もう40年も昔の話だ。
 元・革マルアジテーターを始めとした得体のしれない男たちが山守組長の店にずらりと並び、楽しい夕食をする。父と母の結婚が決まり、やがておれが生まれて、今日に至る。あまりいい結婚とは言えなかったようだ。
 そして話は『仁義なき戦い』に戻る。『映画秘宝』の表紙を見れば「仁義なき戦い the 40th Anniversary」とある。『映画秘宝』の出版元は洋泉社で、宝島社の子会社だという。おれは映画雑誌のことはよく知らぬが、Wikipediaなど読むに宝島から出てきたもののようだ。悪人大名鑑の解説をしているのは杉作J太郎で、おれにとっては別冊宝島競馬読本シリーズ執筆者の一人、キョウエイプロミスの人といっていい。
 これでなにか話の環は一回りしたような気になった。一回りしたところでなにが起こるでもないが、大した意味もない偶然のつながりくらいはあったように思え、やっぱりおれは単純に「世界はおれのために回っているんじゃあないか」などと思ってしまう。そんな気になることもある。

仁義なき戦い Blu-ray BOX (初回生産限定)

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