このごろ乞食を二度ほど見たが

 乞食……、PCな言い換えが思い浮かばないのでこう書くよりない。ホームレスにも広義や狭義があろうが、そこに入るかどうかもわからない。単純に言えば、道端で正座して、その前に紙コップなり空き缶なりを置いて銭を乞うている人のことである。野毛の地下道で一度、石川町駅で一度。おれはヤバい横浜のブロガー(だれがいるのか知らないが)の中でも寿町近くをテリトリーとしている。広義だか狭義だかホームレスは日常のことだ。だが、正座して銭を乞うている人がいる光景というのは、意外にも意外なことなのだ。ひょっとしたらなにかのアート行為なのかもしれないし、何らかのフィールドワークなのかもしれない。もちろん本物の可能性はあるし、あるいは闇金ウシジマくん的なことを強いられているんだ! ということかもしれない。……そんなふうに想像を巡らせる、それは動揺してるからだ。おれは1コペイカですら投じることができなかった。勇気がなかった。それはどうでもいい。ともかく、二度ほど見たんだ。おれは横浜に夜逃げしてきて十年以上経つが、初めて見る光景だったんだ。小学生の頃、大船駅でラッパを吹く傷痍軍人を見たことはあるが(時代を考えると……夢だったのかもしれないが)、昭和の4コマ漫画に出てくるような、あの姿というのは……。自死か路上か刑務所か。いずれおれもああなるのかもしれない。おれには対価となる大道芸のようななにかがないからだ。だまって、じっと座って……。でも、警察かヤクザに絡まれちまうような気もするな。できれば前者から社会復帰(?)へつながれば御の字だが、この国にそんな余裕なんてあるまいて。ああ、どうしたものだろうか。