幻のソヴェート麻雀

 ラヴレンチー・パーヴロヴィチはどんな打ち手か。想像するのはなかなか難しい。フルシチョフならどうだろうか。鷹揚なタイプのように思える。多少無理筋でも役満など狙う。無理筋なので振り込んでも、自分の手を開いてみせて、大笑いしながら「惜しかっただろう!」などと言うタイプだ。ときに大勝ちするが、だいたいは負けて帰る。そうする方がよいと心得ているからだ。セルゴ・オルジョニキーゼも似たようなタイプだが、雀力においてフルシチョフより強くはない。アナスタス・ミコヤンはどうだろうか。狡猾な打ち手に違いない。だが、決して勝ちすぎることはない。メンタンピン三色を丁寧に作り上げつつ、卓上に不穏な空気を感じたら即座にベタオリする。ポケット中を札束でいっぱいにすることもないが、失うこともない。終わってみればプラマイ0というタイプ。ミハイル・トゥハチェフスキーなどは理論も運もついてくるタイプで非常に強い。雀士としては一流だ。その強さが危険であることを知らないことが不運だろう。ジューコフとなるとそのあたりのバランスはとれているに違いない。クレメント・ヴォロシーロフときたら、あまり強くはなさそうだ。フェリックス・ジェルジンスキー。かれは真面目な打ち手に違いない。生真面目過ぎるほどだ。これがヴャチェスラフ・メンジンスキーとなると、珍しい役に走ったりする。ケレン味のある打ち手だ。ゲンリフ・ヤーゴダになると、また真面目な打ち手ということになるが、一緒に卓を囲んで楽しいというタイプではない。強い、弱いといった話ではない。エジョフは短気なタイプに違いない。すぐにポンだチーだと、下手をすると場を荒らす。なぜその一巡が待てない、というところでリーチをかけたりもする。生き急いでいるようだ。さて、ようやく話を戻そう。ラヴレンチー・パーヴロヴィチ・ベリヤはどんな打ち手か。おそらくは豪腕にして怜悧。イカサマも辞さない。しかし、卓に偉大なるスターリンがいたらどうだろうか。わざと振り込みさえして、グルジア語で下卑たジョークを言って歓心を買ったりするくらいのことはする。もしスターリンがいなければ、徹底的に力の差を見せつけて勝つかもしれない。いや、そうではなく、二番手につけつづけて、財布の中をパンパンに膨らませて帰るのかもしれない。クレムリンでどのような麻雀が行われていたのか、知るすべはない。

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 索子の暗刻による「トロイカ」、赤五牌や赤色牌による「革命」などのローカルルールがあればおもしろいのだが。索子の橇と白牌で「シベリア送り」とかな。