おれは卑屈な人間が嫌いだ

 おれは卑屈な人間が嫌いだ。謝られる場面とも思えないのに謝られると、「謝られる筋合いはないと思いますが」と口に出すことすらある。おれは人間の卑屈さが嫌いだ。彼ないし彼女を卑屈にさせてしまったなにかを憎む。逆に尊大であれば好ましいということではない。とはいえ、筋違いの卑屈さに比べれば、すべての人間が尊大であってその尊大さが対等であるような状況のほうが好ましい。すべての人間が等しく卑屈であるよりも、すべての人間が等しく尊大であって、その尊大さの根拠も、彼ないし彼女をそうさせたなにかも、同じく必然的であって不自然でないようなものであればすばらしい。おれは卑屈な人間が嫌いだ。おれの卑屈さも嫌いだ。だからおれはおれの尊大さをほんの少しでも探したいと思う。おれは人間の卑屈さが嫌いだ。