- 作者: ウィリアムギブスン,William Gibson,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/05
- メディア: 単行本
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『あいどる』も読んだ。『バーチャル・ライト』、『あいどる』は読んだ。日本のラブホテルの描写がよかった。『フューチャーマチック』。これは読んでないかもしれない。どちらでもいい。情報史に関する本を手に取ったこと、ちょっと前にここらのネットでSFが話題になっていたこと。そして『パターン・レコグニション』に手を出した。
SF。すこし不思議。同時代ペンギンの小説。われわれが夢見たサイバースペースは出てこない。近未来ないし未来的ガジェットも出てこない。2003年の話。むしろ、脳内で彼ないし彼女の使うiMacを最新式のそれで想像したり、携帯端末をiPhoneにおきかえる必要があるくらい。
スピード感はあまりない。解説によると、ギブスンは本作で、リアルな現代性と一人の視点ときめ細かな描写を心掛けたらしい。そのとおり。そして、われらがかっこいい女主人公ケイスはロンドン、東京、ロシアを旅する。
東京の描写はまるでフランシス・コッポラの撮った映画みたい。いや、それ以前にギブスンが描いてきた描写を思い浮かべるべきか。ギブスンの都市の描写、あるいは都市の情報の描写はすばらしい。ケイス、皇居には入れないが、東御苑はお金を払えば入れる。観光客だらけで神秘的な小径とはいかないかもしれない。そういう意味で、都市と同じく、われわれのサイバースペースの描写もリアルだ。過不足はない。
とすると、一般小説(というものがあるのかどうかわからないが)、SFでないのか、というとそんなことはない。そんなことはない、と言える根拠は……ないが。まあ、ジャンルなんてどうでもいい、となると、なかなかいい。悪くない。先に述べたが、スピード感はあまりない。目まぐるしいフリップみたいなものはない。丁寧だ。おそらく、小説をおもしろくするいくつかのポイント、のようななにかに忠実なように思える。そして、むしろ、われわれのまわりを埋めつくすような、ファッション・ブランド、ロゴ、名前、名前、名前に、特殊なアレルギーを持つ主人公ではないけれども押し潰されそうになる。なるというと言いすぎだが。
そこに、執筆中に起こった9.11の要素が入り、裏側にはなにかありそうな世界がある。国家や都市の記憶がある。ピラティスをする身体があって、相似形の都市があって、世界がある。身体はその内部に、その遺伝に情報がある。その一貫性、サイバネティクスというもの。違うか。
まあいい。おれは続いて『スプーク・カントリー』を読んでいる。その先には、時代をさかのぼって『ディファレンス・エンジン』を読もう。
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……このエントリはすこしだけタイトルに偽りありだが、偽りないほうの話はどうなっているのだろうか。
……『ヴァーチャル・ライト』を酷評して『あいどる』を評価している。まったく記憶にない。