ぼくのむかしのあいどる

 おれは1979年生まれなので、80年代アイドルに対して微妙な距離にある。その全盛期というものを、アイドルのターゲットたる年齢として過ごしていない。かといって、ここに並んだ彼女らの名前を知らないかといえばそんなことはない。ただ、はっきりと知ったのは、なにか大きなブームが過ぎ去ったあとのことだ。そんな気がする。非常に大雑把な認識だけれども、彼女らが脱アイドルしたあたりに、ようやくアイドルを認識するべき年齢になったという感じだろうか。なんとなく幼心に思い出されるのは、ワイドショー、梨本、スキャンダル。あとは、親に吹きこまれたかどうか知らないが、「アイドルは歌が下手」という偏見。おそらくは、世代差や流行といったものを、生まれてはじめて意識したのは、テレビの中の彼女らによるものだったのではないか。人間でも脱皮とかする。
 では、おれが中高生だったころのアイドルというとだれになるのだろうか。これを考えてみたがいまいちピンとこない。内田有紀か? 広末涼子か? 安室奈美恵というとアイドルという感じとはちょっと違うかもしれない。その後、宇多田ヒカルが全部ひっくり返したような気がするが、いつのことだかよくわからない。曖昧模糊としている。というか、おれは生身のアイドルに強いファン意識をもったことがないのかもしれない。せいぜい広末か?

 ただ、歌というイメージは少ない。ヤンジャンのグラビアというイメージが強い。アイドルと音楽。中学の教師にバンドでドラムを叩いている人がいて、よく「アイドルの楽曲とバックバンドはいかにすごいか」ということを熱っぽく語っていたものだったが、さておれにはよくわからなかった。アイドル歌謡というものはなにかそのころ無かったような気がしたし、おれは立派な中二病だったのでロッキンオン(洋楽の方ね、というか邦楽の方はあったのだっけ、そのころ)を読んで洋楽を聴いていた。
 さて、その後、三十をすぎる頃になって、邦楽ロックバンドを聴くようになったり、アニソンに手を広げてみたり、日本語ラップを聴くようになったりして……、さてひょっとしたら80年代アイドルの音楽というのも沃野が広がっているかもしらん。かといって、そこに沃野があったとして、探っていくいろいろの意味での余裕があるかというと、ないような気もする。やはり思春期に聴いた音楽に回帰するとなると、ブリット・ポップ付近を漁る方が楽だろうか。あ、結論なんてないよ。おしまい。

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……まあ、正直内容なんて覚えてない。

……今どきは初音ミクをはじめとするボーカロイドを考えずにはおられないのだろうか。