ピル対スプリングヒル鉱山事故―リチャード・ブローティガン詩集
- 作者: リチャードブローティガン,水橋晋
- 出版社/メーカー: 沖積舎
- 発売日: 1988/11
- メディア: 単行本
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ボート
お 美しきは
みずから罪の森にすむ
狼男であった
わたしたちは謝肉祭に
狼男を連れていった
まわるフェリス観覧車※を見て
狼男は吠え
はじめた
電気仕掛けの
緑と赤の涙が
毛むくじゃらの
両頬を伝って
流れおちた
狼男は
暗い水の上を
流れ去る
ボートのようにみえた※巨輪のへりに乗り物をぶらさげた設備
おれはこの詩を読んで「フェリス観覧車」というものにいろいろの想像を膨らませた。おれの知っている、あの桜木町駅のホームから見える、ありきたりの観覧車ではない観覧車。おれの知らない、巨輪を用いた特殊な、特別な、観覧車。いったいどんなものだろう。パンジャンドラムみたいな代物だろうか?
おれは手のひらサイズの携帯端末ですぐさま調べた。
wikipedia:観覧車
観覧車(かんらんしゃ、英語: Ferris wheel)
ん?
wikipedia:ジョージ・ワシントン・ゲイル・フェリス・ジュニア
観覧車は英語ではFerris Wheelという。Ferrisは彼の名前に由来している。
ふつうの、観覧車のことじゃないの。なのにわざわざ「フェリス観覧車」と訳して、訳注までつけるの。なんでさ。おれの空想の「フェリス観覧車」は、大勢の女学生を乗せて、「ごきげんよう」と言いながら、回り続けて、やめることを知らない。とくべつの巨輪があって、とても奇妙な方法で乗り物がぶらさがっているんだ。おれの「フェリス観覧車」……。
おれの好きな詩は次の一編だった。
自動詩撰
飢えにせかれて いつもと違う
強制的な独身者の夕食を今晩とった
中華料理にするか それとも
ハンバーガーにするか 決心しなければ
ならないトラブルを抱え込んだ 神よ
ひとりで夕食をとるのは嫌です まるで
死んでいるのと同じです
>゜))彡>゜))彡>゜))彡
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