こちらを読んで思ったことなど。
郊外、サバービア。あるいは国道沿い感。その空虚さ。そこにあるなんらかの消息。おれはそれに惹かれるところがある。それが(それを描いたものが)ある種の陳腐な感傷趣味にすぎないとしても、憧れるところがある。
と、そんなことを言うおれはどこで育ったのか。神奈川県鎌倉市、だ。鎌倉ならあるていど名の知れた地名だ。だからといって、おれは「鎌倉」だけで自分が育った場所柄を説明できる気には到底ならない。田舎や地方と都会、なんて大きな括りでなにが語れるのだろうか、自分がやろうとしてもおおよそ無理な気がしてならない。
おれが育ったのは鎌倉の中の腰越・津のあたりだ。大仏からは離れていて、世界遺産とは無縁の雰囲気のあたりだ。といっても、これでも不十分だ。まず漁港の名残ある腰越と津では空気が違う。そして、津の中の津西の藤沢にとても近いあたりの住宅地、湘南モノレール沿線だ、といってはじめて場所を表明できたような気になる。おれには『青い花』と『TARITARI』と『つり球』の微妙な土地柄の違いがわかる。土地鑑がある、というやつだ。ただ、もう鎌倉を離れて10年以上経つので、正確かどうかわからない。
して、おれが育ったのは、いわゆる郊外なのか、郊外の住宅街なのか。国道沿いではないが、どうなのか。よくわからない。そして、なぜそこに妙な惹かれるのか。正直なところ、よくわからない。
郊外のイメージは都市のイメージに対応して生じるのだ。都市が宇宙(コスモス)の範例(パラダイム)や、文明と自由の中心と見なされる時、その外、つまり郊外に住むことは、境界の外に出ることであり、人間性を十分に発揮することのできない薄暗い地域(トワイライトゾーン)に居ることを意味する。いっぽう都市が、忌み嫌われるもの、すなわち「邪悪な騒音」として記述される時には、郊外は、神聖ではないとしてもロマンチックな輝きを手に入れる。どちらの場合の郊外も、都市と関連しているが、全く現実的なものではない。
イー・フー・トゥアン『トポフィリア 人間と環境』第14章 郊外とニュータウン――環境の探究より
薄暗い地域(トワイライトゾーン)に勝手なフラジャイル幻想を抱いているのか。そうかもしれない。一番上に貼ったキリンジの「エイリアンズ」。たまにラジオでかかって、歌詞の内容など知らずに、ずいぶんあとになってから買ったのだが、なにかそういうものが詰まっていて、たいへん好もしく思っている。
遥か空にボーイング 音もなく 公団の空の上 どこへ行く
そうさ僕らはエイリアンズ 街灯に沿ってあるけば ごらん新世界のようさ
アニメで言えば……『化物語』や『まどマギ』で描かれる、極端にデフォルメされたような風景、とかか。もし郊外がトワイライトゾーンであれば、『化物語』などは都会であってはいけない。かといって、人の少ないまったくの田舎であってもしっくりこない。そういうところがある。ひょっとするとだが、そういう境界であることが、物語にとって都合がいい、とくに怪異のようななにかが生じるのに都合がいいのかもしれない。もっと規模の大きいドンパチは、都会か、あるいは伊豆大島とかでいいのかもしれない。
ところで、キリンジ以前に、というか、はじめて郊外、サバービアなるものを知った、意識したのは洋楽経由だった。Suedeの「Stay together」だ。「There's a blue suburban dream.」。もちろん対訳もあったが、英語の辞書だってひいただろう。おれはおおよそ神奈川県から出ない人間で、海外なぞ行けるはずもない人間なので、UKもロンドンも知りはしない。けれど、Suedeは郊外的なトワイライトのあるバンドだと思う。後付けだけれども、そういうところもあったんじゃないかと思う。
そして、映画でいえばこれらになるわけだが、都市(都会)と田舎の間にひろがるスプロールというものもあるはずだ。SFでいえば、ウィリアム・ギブスンが……と、さて、昼休みも終わるのでこれでおしまい。
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……2005年にも近いところを引用しとるな。ただ、今回目を通したときの方が「ハッ」とするところがあった。
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……2007年にも同じ曲を引き合いに出している。まったく記憶にない。
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