白昼夢

 狭い一方通行の道、白い営業用ワゴンが徐行して入ってくる。おれは右腕を大きく後ろに引き、拳をおもいっきりその車のライト部分に叩きつける。拳に鈍い痛みと、肘と肩にしびれが走る。ライトはびくともしない。運転手がクラクションを一発叩いて降りてくる。狭い一方通行の道を歩いていると、向こうから白い営業用のワゴン車が徐行して走ってくる。これは衝動的に右の拳でワゴンのライトを思いっきりぶん殴った。パンっと音がしてプラスチックが割れる。鋭い痛みに血の流れたことがわかった。一方通行の狭い道を白い営業ワゴンがゆっくりと向かってきた。おれは拳を握り締めると、思い切ってライトの部分をぶん殴った。弾け飛んだのはおれの方だった。いくらゆっくり走っていてもワゴンは重く、こちらに向かって走っていたのだ。おれは跳ね飛ばされてアスファルトの上に転がった。接触事故かと勘違いした運転手が慌てて飛び出してくる。狭い一方通行の道だった。白い営業用のワゴンが右折して入ってくるのが見えた。徐行してこちらに向かってくる。すれ違いざま、ライトを殴った。拳はプラスチックを叩き割るとともに車体へ食い込み、ワゴンはバランスを崩して左側に横転した。パニックになった運転手は変な体勢になって必死にシートベルトを外そうともがいていた。一方通行の狭い道を営業車らしいワゴンが一台のろのろと走ってくるのが見えた。おれは二、三歩ステップして右手でライトの部分を狙ってパンチ。振りぬいた拳の先に飛んでいくワゴン、電信柱に直撃するとそのまま落下、車体の前面が地面に衝突する。フロントガラスにクモの巣状のヒビができ、運転手は頭部を破壊されて絶命していた。一方通行の狭い道を一台のワゴン車が左折して入ってくる。歩行者もちらほらいるので徐行をしていた。おれはスタスタとワゴン車に近づくと、右のライトにアッパーカットを食らわせる。車体は前輪から浮き上がり、後輪を軸にして後ろに倒れた。運転手は首の骨をいためたらしくなにか呻いている。ワゴン車の下敷きになった浮浪者は肺を潰されて、それでも必死に空気を取り込もうと喉をひくひく動かしていたが、やがてまったく動かなくなった。狭い一方通行の道をワゴンが一台徐行してきたので、おれはワゴンの右ライトを力いっぱいにぶん殴った。車はびくともせず、おれは腕の痛みにうずくまった。ワゴンを運転していたおれは殴ったやつを怒鳴りつけるべきなのか心配するべきなのか、これは暴行の被害者なのか、これでもこちらが加害者なのか、警察を呼ぶべきなのかどうなのかさっぱりわからなかった。ハザードランプをつけ、シートベルトを外してドアを開ける。九月でも外の空気はまだまだ暑かった。ワゴン車の下敷きになったおれは、必死に呼吸をこころみているようだったが、数秒の努力で終わった。よく晴れた空はまだ夏のようで、セミの鳴き声が聞こえないのが不思議なくらいだった。一方通行の道を白い営業用ワゴンが右折してきた。