憎悪の列島に生きている

憎悪の列島に生きている。強いものは弱いものに傲岸さでそれを示し、弱いものは強いものに卑屈さで応じる。応じるよりない。心中で憎悪の火を燃やす。強いものの心中はわからない。おれはいつも弱く、卑屈だ。

傲岸さと卑屈でこの列島は成り立っている。ほかのものは総じて見せかけにすぎない。耳にやさしく響く美辞麗句など、ポエムなど、ドブ川に流すべきだ。どんどん流せ、川を埋め立てろ。

正直になれ。あれはおれを殺そうとするし、これもおれを殺そうとする。みなおれを生かさないように巧妙に働き、おれはひたすらに疲弊し、まったく疲れ果ててしまって、考える脳みそすら減る一方だ。まったく巧妙なんだ。おれには選択肢なんて与えられていないし、選択する自由もなかった。それをコントロールする能力がなかった。

憎悪列島の一角で、おれはまったく疲れてしまっている。どんな機械じかけよりも巧妙な細工が張り巡らされ、おれを生かさないように、殺すように動いている。あらゆるものがおれを苦しめようとしている。間違いなくマシーンは稼働している。

おれは卑屈に地べたを這いずり回り、なんとか難を逃れられないかと思う。はっ、そんなものは無駄もいいところだ。これが延々と続いてきた。これが延々と続く。どこかで終止符を打つしかない。脳みそを打ち抜いてこのおれに対する憎悪を止めなくてはいけない。止めなくては救われない。

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憎悪を藁人形かなにかに向けられるものは幸せだ。それで卑屈さを忘れることができる。引き金の先になにかを見ることができる。やるべきことは簡単だ。世界と調和している。偽りの世界と調和している。安楽なことだろう。憎悪の安楽とともにあればいい。安楽の門を開け放て、出ろ、憎悪の国に似つかわしいヘイトスピーチ

おれも憎悪の対象を、もっと具体的に持つべきだろうか。持つべきだと思って持つものでもないだろう。要するにおれは強いものにもなれなかった。敵を見つけて憎悪と調和できもしなかった。そういう性分だった。いまさら嘆いても、すべては遅すぎる。おれがなにかに打ち込むとしたら、他人の頭に釘ってわけにはいかない。頭が見つからない。いや、ある、おれのこの体躯の上に乗っかってる。そいつに叩き込んでやれ。五寸釘、叩き込むしかないんだ。