すばらしい日本のハロウィン

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 人々は夕昏、親類縁者、近所の者と連れ立って路地を練り歩く。片手にはロウソク、もう一方の手には手斧を持っている。そこに巡査役の男が現れ、「チミら、なにをやっておるのかね!」と言うと、みなで取り囲み、「ロウソクで責められたいか? それとも手斧を喰らいたいか?」と詰め寄るのである。たいていの場合は「ロウソクをお願いします」と言い、夜明けまでロウソク責めが続けられる。腹が減ると皆で餅を食い、またロウソク責めを続ける。

 一方で、長いロウソク責めを嫌がり、「手斧」と答える稀な例もある。その場合、巡査役の男は一目散に逃げだし、一呼吸置いてから人々は手斧を投げるのが常である。たいていの人々は手斧を投げるのに慣れていないので、走り去る男に命中させることは困難である。とはいえ、なにかの間違いで直撃を喰らえば無事では済まない。ただ、その場合でも人々はとりあえず餅を食って、その後に大怪我を負った男の処置ないし、死体の処理を行う。死体の処理に直接携わったものには特別の餅が振る舞われる。

 また、手斧のかわりに棒手裏剣が用いられる地方もある。ある地方では投げ役の男が日頃から訓練をしているため、逃走する男の背中に命中させるのは容易である。そして、逃げ出した男が倒れると、町長が出てきて人々に抗議することになっている。が、それは形式上のことに過ぎず、人々は町長を無視して棒手裏剣の男を胴上げして盛り上がる。その地を取り仕切る神官が町長をなだめて、皆で餅を食う。

 そういったケースで最後に行われるのが、川への飛び込みである。死者の祟りを予防するために行われるとされる。裸の若い男たちが次々に冷たい川に身を投げるのである。そして、川から上がってきた男たちには、温かい餅を振る舞うのが常である。