『3月のライオン』1〜9巻を読む

 なんども書くがおれはそれなりの漫画読みだったと思う。15年位前までは確かに。しかし、生活が困窮し、まず手放したのは漫画と漫画を読むという習慣だった。2年位前からアニメを観だしたために、それに関連する作品を買ったりはしているが、「漫画は我慢」というのが基本線だ。たとえ、どんなに面白そうというか、面白いに決まってるだろと感じても、おいそれとは手を出さない。
 が、長い年末年始に手を出してしまった。これは『ささめきこと』の「ふと」以上に確信的ななにかがあった。一応の薄い将棋ファンとして、これはやはり押さえておかねば、と。
 と、読んでその確信が間違いでなかったことを確かめた。なんて贅沢な確認だろうか。棋士という変人たちの世界がたしかにそこにあり、勝負の峻烈さも、静寂さもあった。そして、一人の悩める少年が確かにいて、それをとりまく二つの家族があった。
 ああ、やっぱり世間でよいとされているものはよいものだ……。と、同時に、学校のエピソードというのは個人的におれを刺す。小学校の最後を不登校で逃げたおれ。中高一貫校の最後は皆勤しながら最後には話し相手一人いなくなったおれ、友人が作れず大学からドロップアウトしたおれ。たくさんの逃げた経験をそのままにしながら、だらだらと生きているだけ。勝負をしたことがない。勝った記憶もなければ負けた記憶もない。努力をした経験がない。ああ、あかん、その現実との対比よ。
 と、自分語りをしたところで仕方ない。一番好きな登場人物は島田開。一番好きなシーンは……、シーンというか、8巻の表紙かしらん。まあ、選べないということだ。
3月のライオン 8 (ヤングアニマルコミックス)