これがあの……!『炎628』を観る


 観ておくべき戦争映画リスト、いや、戦争抜きで観ておくべき映画リストなんかでたまに名前を見かける『炎628』という奇妙なタイトル。いつか観ようと思っていて、思っていたので、観た。予備知識などあまりなく『鬼戦車T-34』(未見)との区別すらついていなかった。そんなロシア……いや、ソ連映画というべきか。
 舞台は白ロシアベラルーシ。主人公の少年が戦場跡から掘り起こした銃を持ってパルチザン(「歩哨戦」という言葉が出てきたが、ゲリラ戦みたいなニュアンスだろうか?)に参加し、凄惨な戦場を、戦場とは言えぬ戦場をさまようことになる……。戦争映画、といえば戦争映画なのだろうが。空には空飛ぶ額縁(フォッケウルフFw189か)、地雷あり銃撃あり……。だけれども、なんといってもこの映画は虐殺の映画だろう。村々を遅い、子供と老人を皆殺しにしていくドイツの武装親衛隊アインザッツグルッペン?)。その乱痴気騒ぎ、狂気のパレード、これである。とはいえ、直截的にそのシーンが映し出されるかというとそうでもない。それが逆に恐ろしくすらある。少年自身の家族の屍も、共にいた少女(彼女が森のなかで踊るシーンは美しかった)が走りながら一瞥する塊。小屋に閉じ込められた人びとが死ぬ姿も映されない……が、声が響き渡る。ハエのたかる音、人の悲鳴、音響効果というのか、グッと映画にはまりこんでしまう。
 出てくる人間という人間がすべて醜い、とはいえない。いや、あらゆる人間が醜い存在で、あらゆる組織は悪で、それが戦争という状況下でどうなるのか。どう振る舞い、どう誤るのか。そいつを克明に描いている……とでも言うべきか。だいたいの印象だと、登場人物の正面と正対することが多かったように思える。それもきついといえばきつい。
 映画の中の少年はもっときつい。己が行動が家族を、仲間を死に追いやる。一度、二度、三度……。救いがない。最後、逆回しのヒトラーを射殺する。一発、二発、殺すたびにドイツは逆回転していく。やがて一人の赤ん坊の写真にいきつく。赤ん坊のアドルフ・ヒトラー。それを撃つか撃たぬか。少年はなにを選択したか。おれだったらどう考える。『イングロリアス・バスターズ』だったら爆破しちまうか? 『炎628』の意味もわかったうえで人になにができるのか。……知った話じゃねえといえばそうかもしれん。たとえおれが大日本帝国の孫であったとしても、わかりゃしねえと言うこともできる。言う権利もあるかもしれん。あるいはロシア人とて、最後のベルリンでなにをしたかという話もある。話しならいくらでもある。話じゃないところでどうできるかだ。そのくらいの猶予はほしい。われわれ人類は馬鹿、わかりきってる。涙を流しながら機関銃を撃つナチも描かれていた、もどしてるやつもいた。だからって、もっと陽気な馬鹿らしいことで、わかりあえるところはわかりあえたらいいのにな。そんなことしか、言えぬ。

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……これは独ソ戦といってもやや毛色は違う。

……これも対独戦だがやはり毛色は違う。

……ふと、思い出す。