- 作者: 伊藤計劃,円城塔
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2012/08/24
- メディア: 単行本
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「ワトソン博士、この調査で何か明らかになったとしても、それはあなたの理解であり、あなたに許される物語にすぎません。わたしの物語ではありえないし、物語である以上、アレクセイに関する事実でもない。たとえその物語をアレクセイが信じていたとしてもです」
伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』を読んだ。でも、おれは『屍者の帝国』を読んだと言えるの? そういう疑問が頭をよぎる。おれには前提となる知識が少なすぎる。なぜならば、物語を構成する既存フィクションのキャラクターたちの小説をまるっきり読んだことがないからだ。『シャーロック・ホームズ』シリーズも、『ドラキュラ』も『フランケンシュタイン』もなにもかも……。メジャー作品をまったく読んでない。その上、物語が二階建てになってると迷子になる癖がある(単に頭が悪いだけともいう)。バットを持たないでバッターボックスに入る……だと言いすぎかもしれない。そうだな、せっかく浴衣を持ってるのに、普段着で花火大会に行く? くらいの残念さが残る。おれは『屍者の帝国』を読めたの?
とはいえ、花火大会は花火大会だ。面白いんだよ。それゆえに、着ていない浴衣のことが気にかかるんだ。スチームパンクはジャンルとしてすごく好きなわけじゃないけれど、『ディファレンス・エンジン』は読んだぜ。まさに『ヴィクトリア朝のインターネット』だ。過去を舞台に未来、いや、現在を描いているといってもいい。そして、さらなる過去の過去、人類の原初はなんであったか、というところまで行く。素敵じゃないの。そう思えば、既存フィクションのキャラクターたちがなんであるか、などということは放っておいてもいいような気がする。虚実それぞれになんら注釈(円城塔「つぎの著者につづく」みたいな)がついてるわけじゃない。まあ、おれには現代のインターネットがついている。おれのフライデー、iPhone。ちょこちょこWikipediaに問合せながら読めばいい。これもまた読書の新しい形かもしれない。いや、昔の人も字引に頼りつつということもあったろうが……。
そうだ、情報だ、情報についてだ。そいつを置いてこの小説は語れない。ただ、それについて書くと核心を書いたりすることになるだろうし、そもそも核心なんぞ書けないので、各自確認されたし。その前に浴衣を着るも着ないも自由だ。以上。
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- 作者: トム・スタンデージ,服部桂
- 出版社/メーカー: エヌティティ出版
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- 作者: ジェイムズグリック,James Gleick,楡井浩一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/01/01
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……小説を読めないおれと『ディファレンス・エンジン』 - 関内関外日記(跡地)