フライデーたんがかわいければそれでいい! 映画『屍者の帝国』


 おれは原作も読んでいたし、SFはそれなりに好きだし、アニメは好きだし、上映されたらすぐさま観に行こうと思っていた。が、一緒に行こうと思っていた女が「都合が悪い」というので次週にした。次週になったら次週も都合が悪かった。
 2週間のあいだ、おれは映画『屍者の帝国』の感想をいくつか見て回った。ひょっとしたら、「行かなくてもいい理由」が見つかるかもしれないからだ。おれは貧乏だ。できることなら無駄な金を使いたくない。とんでもない駄作だというような話であれば、いずれ円盤が出たときに借りればいいということだ。それにおれは原作を読んでいる。はっきり言ってネタバレを回避するためか、まったく意味を理解していなかったのかわからないが、日記の感想を読んでも内容をほとんど思い出せないのだが……。
 して、いろいろの感想を見るに、フライデーの設定でBLか少年愛かという話になっていて、その点を好まないという意見が散見された。話自体の改変も悪いという話もあった。しかし、なにより主人公のワトソンがかつての友人であり、現在屍者中のフライデーに執着しすぎだという話が気になった。というか、そもそもWebで観られるPVやイラストを見るに、フライデーたんかわいいのである。なにが言いたいかといえば、そういった悪評はかえっておれにとっては「いいですねえ」の風以外の何ものでもないということだった。

というわけで、人形も好きだ。人形にはひかれる。けっこうひかれる。少女人形、少年人形などというと、なにかぞくりとくるところがある。究極的なところ、あるいは他のエロ嗜好をさしおいて、最後に人形に行きつくのかもしれない、などと思うこともある。

ひとがたの君の時代 - 関内関外日記(跡地)

 美少年の死体人形というと、おれの嗜好にグッとくるところがあってしかたないのだ。そしておれは『屍者の帝国』を観に行った。行く前に、図書館に寄って伊藤計劃が書いた部分だけ読んで復習した(『屍者の帝国』自体は貸出中なのでなかった)。そうだ、おれのかすかな記憶では、フライデーは、たとえば『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の木のやつとまではいかないが、なかなかいい味出してる脇役じゃなかったのか。それを、大胆に、主人公の恋人役に持ってくるとは……。とはいえ、『屍者の帝国』にだってこんな記述があるのだ。

霊素(スペクター)の抜けた――生命のともしびの消えた肉体には、ある種の残酷な美しさがある。

 これである。これに、冒頭のこの頃のロンドンでは墓を掘り返して働く屍者にする事件が多発しているなんていうところと合わせれば、映画版の冒頭もオッケーというところだ。
 それでもって、映画全般もオッケーということになる。ゾンビ動きも悪くない。階差機関も悪くない。ピンカートンやリットンが省かれていたのもべつにいい。相撲は……べつにいらないか。「下着じゃないから恥ずかしくないもん」はすばらしいストライクウィッチーズへのオマージュだろう。で、たぶん、読書時にはナムヌモのセールスマンみたいにイメージしていたワトソンが美青年すぎるというのも問題ない。なにも問題ない。彼がフライデーを求める、それだけの物語として見れば、なんの問題もない。『未來のイヴ』のハダリーにそんな巨乳のイメージはない、といっても、それも問題ない。上映後、「バーナビー」という名前に盛り上がる若い女子客たちがいたことも問題ない。ともかくフライデーたん一途のところで、それはもうそれでいいんじゃねえの、という。そういうことにした。文句があるならもっとフライデーといちゃいちゃしてくれという、もっとフライデーのいいとこ見せてくれという不足感である。
 ……とはいえまあ、なんというか、最後の盛り上がりのところは、なんというか、ありがちのありがちな「人類補完計画」みたいなものの亜流だし、パイプオルガンなんかは『バーバレラ』のデュラン・デュラン博士かという話だし(そんなの思い出すのおれくらいかもしれないが)、よくも悪くも……ノイタミナ? という印象もあった。再度いうけれど、おれは原作をほとんど覚えていないし、死体で、人形で、美少年の、フライデーたん目的だったわけだが。しかしなんだろう、言語は意識に先行するのか、意識は言語に先行するのか、自我というものがあればそれはなんなのか、おれにはよくわからないのだが。
 まあいい、これでとりあえず「Project Itoh」とやらの一作はクリアした。『ハーモニー』は声優陣が好みなのでこれはぜひ劇場で観たい。『虐殺器官』は……こっちの事情でどうこうという話なのだろうか、完成を望む(さすがに完成させるだろうけど)。そんなところで、まあ。

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……もうちょっと強気にあらすじと感想を書いておけと思う。こんなエントリ、無駄もいいところだ。

……これにしたって同じ話である。とはいえ、この映画の感想文にしたって同じことである。しかし、無駄を垂れ流す自由だってあるわけだろう。問題はおれにとって役に立たたないということに尽きる。