もはや狂気の世界『言の葉の庭』

 風景、背景に突き進んでいって、突き抜けて、どっかわからない地点にまで到達したんじゃあないか、この作品。それだけこの作品の雨の表現やらなんやらはすさまじい。おれは世界中のアニメをすべて観ているわけじゃあないから知らないけれど、ここまで凝った代物はなかなかにないんじゃないのって思う。ぜひBlu-rayなりなんなり、できるだけよい画質でご鑑賞くださいというか。
 一方でストーリーは……とか言うのは野暮のように思える。いや、そんなに悪い話じゃないんじゃないの。おれはあんなに立派な青春時代を送ってないから、まるで主人公に感情移入できんかったというのはあるけど、そんなのはおれの事情だ。でも、背景が、雨が、飛び散る葉が雄弁だ。それでいいじゃない。主人公の少年は靴職人を目指しているんだが、足フェチ感なんてもんはゼロ。一方で、雨粒の跳ね返りに見られる作り手の執念のようなもの。そこがいいんじゃないの。もう、そういう割り切りでいいと思う。川瀬巴水の新版画を観て思わずため息つくような、そういうもんだと思えばいい。
 そう、はっきり言っておれはこれが何分の作品か知らんで見はじめたんだけど、ラストで曲がかかってきたときに、「こりゃまた長えPVだ!」と思ったのもたしかだ。でも、アニメにもいろいろあっていいんじゃねえの。この作品、ふだんアニメを観ない人にもとか、そんなんじゃなくて、なんというか、背景がすごいんだ。それでいいと思う。もう、ここまで来ちゃったら、とことん行ってほしいと思う。行け行けだ、行くんだ新海誠監督! という。なんか投げっぱなしな感想で申し訳ないけど、そんだけなにかすげかったな、と感じるところがあった。いやはや。

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