古川日出男『聖家族』を読んじゃったんだよ、俺。

聖家族

聖家族

ガ?

ガ?

 おれはべつにママに「よく読んだね」ってほめてもらうために本を読んでるわけじゃあない。けど、『聖家族』を読み終えたときは、だれかに「よく読んだね」と言ってほしいな、と思った。だってこんなにクソ分厚いんだもの。『ベルカ、吠えないのか?』がかっこいいなと思って、次に古川日出男の棚を見たらこの分厚いのがあったんだ。「こんなくそ分厚い本に何が書いてあるんだ?」と思ったんだ。そうして手にとったんだ。
 何が書いてあったんだ? 東北のことが書いてあったんだ。おれは3.11の日付付近、『聖家族』の中の東北を彷徨っていた。そう言える。ほかになにが書いてあったんだ? 鎧わない鎧のこと、剣でなく拳のこと、ビートルズのこと、ご当地ラーメンのこと、死刑囚のこと、仙台拘置支所のこと(ここまでたくさんのことを調べた著者が、宮城刑務所内の[wikipedida:古城の朝鮮ウメ]に触れなかったのはなぜなんだ?)、ある血族のこと、べつの血族のこと、新興宗教のこと、ヒップホップのこと、十三湊のこと、日ノ本将軍のこと、天狗(天の狗……やはりこの著者はイヌのことを書く)のこと、神かくしのこと、馬のこと、宇宙人のこと、図書館のこと、日本の歴史のこと、天皇のこと、征夷大将軍のこと……書ききれるわけないじゃないの。
 とはいえ、話が、時間が、あっちに飛び、こっちに飛ぶ、だから読みきれた感もある。正直言うと、おれはこの古川日出男という人の文章にうまくフィットできない。とっかかり、つっかかる。なにか都市を主観とするような、実験的な手口も、取材して出てきた資料をそのまま記録として出してくるようなところも、あんまり好きじゃあない。でも、全体的に嫌いだったらこんな分厚いの読み通す気にはなれないぜ。まあ、おれが漢字かな交じりの日本語を正しく読めているかどうか怪しいものだが。
 しかしまあ、色々書いたが、なんといっても東北の話だ。東北流亡の「メガノベル」だ。おれは北海道生まれだがすぐに関東の人間になって、今は横浜なんぞに暮らしていて東北には疎い。東日本大震災によって、福島県浜通り中通り会津に分かれているなんていうことを知ったくちだ。『遠野物語』もろくに読んじゃいない。けれど、東北というものの地と血と知というものの一端に触れた……いや、どこかに分け入ってしまったような、そんな気持ちなったな。わかりゃあしないんだ。でも、読んじゃったんだもの。平成23年3月11日以降の記憶を持って、平成20年に出たこの本を。
 おれがなにか圧倒されているとしたら、分厚さもあろうが(あるんだよ)、それ以上のなにか遠い北の方の……なにかにだ。それがなんなのか、読んで確かめてみたらどうだ。文庫本の方には、ひょっとしたら家系図も載っているかもしれない。それじゃ。

聖家族(上) (新潮文庫)

聖家族(上) (新潮文庫)

聖家族(下) (新潮文庫)

聖家族(下) (新潮文庫)

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