『言葉なんかおぼえるんじゃなかった』田村隆一(語り)・長薗安浩(文)……再読

 

おれは言葉についてあるていどの意識を持っていると言ったら変だろうか? ともかく、言葉、たった一つの母語である日本語について、あるていどの意識を持っている。そういうつもりである。

そのおれに影響を与えた日本語の使い手は何人かいる。しかし、最高にかっこいい日本語をの使い手となると、詩人の田村隆一ということになる。おれは田村隆一ほどかっこいい日本語を綴った人間をしらない。

して、本書は田村隆一の「語り」である。というか、もうおれはこの本を読んでいる。

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読んでいるのに、また読んだ。おれはこの本の単行本である『詩人からの伝言』を読んで、こちらは読んでなかったと思っていたのだ。しかしそれでも、やはり田村隆一の言葉はいつだって新鮮で、田村隆一の詩はなんど読んでも新しい。

そうだ、この本にはけっこうたくさんの田村隆一の詩が載っている。代表的な、そしておれが愛する言葉が載っている。ちょっと読んでみてくれよ、なっ。

というわけで、前回の感想で引用していないところから、少し。

 だから、せめて、もう一度言っておくけれど、結婚しても一年間は子づくりは控えること。勢いだけのホルモン活動で産まれてくる子供が、可哀想だろう。もの心ついたら悲劇の中なんて、いい迷惑だよ。

 一年間のバース・コントロール

 これだけは。

 なっ。

おれは反出生主義者なので、一年間の、というのは共感できるところではない。だが、五回だったか結婚した田村隆一の役に立つアドバイスだろう。ちなみに田村隆一は、一年経ったら「できるだけ早く子供をつくることだ。男子一人、女子一人が理想」と言っている。

男の顔なんて、せいぜいヒゲを剃ってクリームを塗るぐらいだろう。まあ、鼻毛もあるけどな。鼻毛って言えば、男は鼻毛を切って白髪を見つけたときに、“人生の秋”を知るんだ(笑)

これはもう、おれも人生の秋を知った人間として言うのだけれど、そのとおりよな。あとは顎髭とかにな。でも、おれの頭髪に白髪はまだ見えない。ハゲるのだろうか。

いいかい、骨身に染みて初めて身につくんだよ、教養は。そうすると、男でも女でも良い顔になるね。特に、男はね。ブ男でも四十くらいで、本当にいい顔になってくるから、教養とは不思議なものさ。

それでもって、おれはちょうど四十なのだけれど、教養の身についた「良い顔」になっているかどうかわからん。おれはおれの顔面にあまり興味がない。ただ、劣った脳みその持ち主としても、いくらかの教養は得たいと思っている。教養人、というとなにかべつな印象があるのだけれど、わかっている人間、わからないものはわからないと判断できる人間でありたいと思っている。

たしかに水平的価値は大事だよ。だけどな、ぼくは垂直的価値と呼んでるんだけど、もう一方で自分だけの絶対的価値を探さなきゃつまらないじゃないか。垂直的とは、天と地を結ぶこと。つまり、生まれて死ぬことさ。そこに価値を見つけられなかったら、何のために生まれてきたんだか。困っちゃうよな。

 これはもう本書のタイトルにもなっている詩の「言葉のない世界」の冒頭よな。

1

言葉のない世界は真昼の球体だ

おれは垂直的人間

 

言葉のない世界は正午の詩の世界だ

おれは水平的人間にとどまることはできない

 

2

言葉のない世界を発見するのだ 言葉をつかって

真昼の球体を 正午の詩を

おれは垂直的人間

おれは水平的人間にとどまるわけにはいかない

 かっこいいな。

でも、借金の話とかも面白い。

 ぼくが敬愛してやまない内田百閒先生の説によれば――。

 金持ちからは決して借金をするな。相手を喜ばせるだけだ。これほどつまらんことはない。金は貧乏人から借りるべし。爪に火をともすようにして貯めた金をこそ、借りろっていうんだ。そうすれば、いやがうえにもその相手との「真の交歓」が生まれる(笑)。友情などの比ではないんだよ。さらに、百閒先生はこう続ける。できるならば、その貧乏人が借金した金を借りてみろ! その時、君は「人生の怪人」と呼ばれるであろう(大笑)。どうだい、痛快だろう。

 それは痛快よな。しかし、おれは金を借りる相手もいない。真の交歓も生まれない。いいんだか、悪いんだか。ちなみに、田村隆一が金を借りるのに、余計に貸してくれたのは金子光晴だけだったという話だ。

死んじゃったから、もう返せないんだよ。

 最後に、人間についての伝言を伝えよう。

人類そのものが愚かなものだと自覚できる人が利口。できない人がバカ。以上が、ぼくの愚説でございます。だけど、ちょっといいだろう。なっ。

 

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