『ぼくの人生案内』田村隆一

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 君の健康を今、いちばん心配しているのはミスター・田村だ。健康になったら恩返ししてください。俺は待ってるぜ

 詩人・田村隆一の人生相談本なのだけれど、これはもう頬を薔薇色に染めながら「キャー、田村隆一かっこええー」とか言いながら部屋の中を転がり回ってしまったくらい「かっこええ」本なのだ。あいだあいだに入る詩、そしてグラビア! もうメロメロという具合です。
 というわけで、「ファンなら買い」の一冊だけれども、ファンでない人にも、若い人にも手にとって貰いたい。そんな年寄りくさいことまで思ってしまうような一冊。だいたい、老人の人生相談などというと、悟りきったような上の視線からなんか押しつけようってもんなんだけど、これは違う。だからといって、やけに悪ぶってたり、若さを持ち上げたりもしない。やはり「等身大の影」の持ち主ですよ、ミスター・田村は。
 そして、詩人なのに、あるいは詩人だけに、実に現実的な回答が多いこと。そこもまたおもしろい。「実家に帰って農家を継ぐべきか」という質問には「立地条件、耕地面積、採算」を分析しろ(ついでに青森は美人の産地だぜ、と)。あるいは、「パソコンが苦手」という質問には、「社会は確実にエレクトロニクスとバイオで動いていく」から「今ちょっとイヤな思いをすればいいんだよ」ときたもんだ。もちろん、そればっかりじゃないぜ。詩人として、言葉の人としてのまなざしもある。しかしまあ、やはりもう、なんというか、いいなぁ、と、今もパラパラめくってて止まらなくなったくらいだ。
 いやはや、これは口述筆記なのかなんなのかは分からないけれど、本当に面白い本だ。たまらん。俺も人生の経験をストックしていって、四十から六十歳にあるという勝負に向かっていきたい。普段、お先真っ暗なことばかり考えている俺がそんな風に思う。やはり詩人の言葉ってのはたいしたもんだぜ。そんな風に思ったな。