脳って沈黙できるの?

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こちらの記事を読んだ。おれはほとんど小島慶子さんのことはしらない。それはべつに関係ない。

小島慶子さんがADHDの薬を服用し、驚いた感覚。「みんなこんなシーンとした世界に暮らしているの?」(withnews) - Yahoo!ニュース

 初めての薬を飲むのは緊張するもの。とりあえず飲んですぐに昼寝をして、目が覚めたときに驚きました。世界がとても静かだったからです。え? みんなこんなシーンとした世界に暮らしているの? これが「ふつう」なの?

 

 ところが薬を飲んだら、ピタッと動きが止まりました。ひらひらと散り動いていた言葉がすっかり静まって、脳が黙っている。考えようとしたことだけを考え、後は余計なことを言わないで沈黙しているのです。

 

知人友人に何度か言われたことがあります。「なんでそんなにいろんなことを考えられるの?」「いつ考えているの?」。その度に「人って、考えようと思わなくても、考えちゃうものだよね? いつって、起きている間はずっとだよ?」と答えてきました。しかしだんだん、「生きている=脳がしゃべっている」ではない人もたくさんいるのだということがわかってきました。思考は呼吸や拍動と同じように、意思とは関係なく浮かんできて、止めようと思っても止まらないものだというのは、必ずしも全ての人に当てはまることではないと知ったのです。

……なんだそれは? 脳が沈黙する? 意識があるというのは、脳がしゃべっていることではないのか?

おれは少し前にこんなことを書いた。

goldhead.hatenablog.com

それを意識というのだろうか。心、あるいは、言葉かもしれない。

 

脳が死んだら文字通り脳死で、それはもう人の死だという話にすらなる。とはいえ、身体が死ぬ、たとえば心臓が止まったら、これはもう死だ。では、心が死ぬ、意識が死ぬ、言葉が死ぬとはどういう状態だろうか。これはどうも脳の死に近いもののように思える。

おれにとって意識というものはほぼ言葉である。意識≒言葉。脳という臓器。手足内臓などの身体、そして意識≒言葉。この三つでおれという人間が成り立っていると、そんなふうに考えていたところだ。

すなわち、おれは意識がある間は言葉が常に頭をぐるぐるしているということだ。寝ているときと、双極性障害抑うつ状態のとき以外は、だいたいそうだ。もちろん、編み物をしているときとか(最近していないけれど)、100kmも自転車を漕いでいるときとか(最近漕いでないけれど)、忘我のときがあるような気もする。あるいは泥酔しているときとか? あまりそこまで飲まない(といってもおれのアルコール摂取量はあなたが考えているよりかなり多い)。あ、もちろん、文章を読んでいるとき、セリフのある映像作品を見ているときなんかは、そちらに意識を譲り渡しているわけだが。

まあともかく、なんだその「シーンとした世界」というのは。「脳が黙っている」とは。それは、なんだ意識を失っているわけではないのか? なんだそれは? みんな、黙っていても頭の中は言葉が溢れかえってるんじゃないのか。

それともなんだろうか。おれもおれの知らないところで「オフ」になっていることがあるのか? で、オフになっているから、オフになっていることを意識できない。ずっとなにか考えているような気になっている。そういうことなのか?

まったくわからん。たとえば、瞑想状態にあるとき、そういう境地に至るというのならわかる。そういうテクニックがあることは知っている。だが、しかし、薬を飲んだだけで? そして、薬を飲んでいない人はそれが普通だと?

だからといって、おれが発達障害だというつもりはない。もちろん、検査を受けたわけではないので、そうではない、とも断言するだけの材料もない。おれにわかっているのは、おれは双極性障害躁うつ病)だということだけだ(双極性障害用の薬が効いているということ)。それが関係しているのか? わからない。

なんだろう、脳がオフになるとは。シーンとした世界とは。おい、おれはちょっと幻覚剤体験をしてみたいと書いたが、あるいはそれ以上に、言葉のない世界を味わってみたくなった。なんなんだ、それは。

たとえば、おれは今、おれの脳内で湧き出てて止まらないものをキーボードに叩きつけているだけだが、脳がオフになったら書くことがなくなるのか? 想像がつかない。ちょっと待ってくれ、なんかおれは変なのか? いや、しかし、意識があるのに言葉がオフになるなんてこと、ないよな。たぶん、おれはその点では普通だ。普通ってなんだ? 人間の多数派に属していることか。そうだろう。そうだと言ってくれ。

 

言葉なんておぼえるんじゃなかった
言葉のない世界
意味が意味にならない世界に生きていたら
どんなによかったか

あなたが美しい言葉に復讐されても
そいつは ぼくとは無関係だ
きみが静かな意味に血を流したところで
そいつも無関係だ。

田村隆一「帰途」(部分)

 

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……脳は不思議よな。