
- 作者: 吉田一穂,加藤郁乎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2004/05/18
- メディア: 文庫
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あゝ麗はしい距離(デスタンス)、
つねに遠のいてゆく風景……
……あれ、それほど重なってないかも。まあ、ちょっと違うかも。
……人が人の労働を搾取する経済組織の桎梏に、その奴隷制度の鉄鎖に囚はれて、人は一個の機械人となった。再び自主労作の悦びから始められねばならない。
「夏」
とはいえ、おれは見たいところしか見ないし。なにかこう、吉田一穂(よしだ・いっすい……なのだけれども、「かずほ」と読みたくなるのはなぜかしらん)、叙情詩から遠くはなれた極北の詩人といわれても、おれにとってみりゃあいかにも「詩」っぽいよなあという感想しか抱けぬところはあり。
9
光る街・急回転の都市はその求心力で地方の生産を吸引する。生活圏の大旋盤は遠心力でその残骸を弾き出す。煙烟の支柱が天蓋を支へて彼を自然の外に置いた、戦慄を作る魅惑的な機械都市。
10
機械が人間を解放した。工場の虐使から失業の街路へ。
「地下鉄のある町」
とはいえ、時代を考えてみろってんだ。島木赤彦の紹介で岩波茂雄に引き合わせれた詩人だ(破談になったらしいが)。そこに先進性を見いだせってもんだろう……か?
誰れからも離れて、無始の境をゆく。
円い水の無限大、原点の孤独な意志、
脱物質の混沌と動揺の海。ささくれたつ波の泡沫、うねりの暗い谷間、
純金の太陽、赤銅色の肌、
魚紋につっこむ海鳥のヘル・ダイブ。
だいぶかっこいいじゃないか。とはいえ、おれにはそのかっこよさが、「いかにもポエムっぽいなあ」という思いを抱かずにはおれなかった。ひょっとしてどこかに極北の詩人の後継者がいて、おれはその後継者の詩を目にしたのだろうか。いいや、おれは詩などろくに読まぬから、知った話じゃないような気がする。どこでおれはこれを「詩っぽい詩」と感じるのだろうか。あるいはこれが、これこそが詩なのだろうか。よくわからぬ。ちなみに、おれにとっての日本語の詩人といえば田村隆一ただ一人といっていい。