
- 作者: ハラルトギルバース,Harald Gilbers,酒寄進一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2015/06/25
- メディア: 文庫
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ただ偉ぶってみせるだけで、田舎くささを脱しきれない地方都市、長年にわたってそうした矛盾を抱えた旧都ベルリンの居場所は、もはやこの偉大な構想にはなかった。独裁者は、はじめからそう表明すべきだったとしばらく前から考えていた。ベルリンという言葉の響きは貧相だ。必要なのは新たな名称。偉大で記念碑的な名、世界都市に相応しい呼称。たとえば<ゲルマニア>。
タキトゥスとは関係ない。ハラルド・ギルバース『ゲルマニア』の話である。だがちょっと待ってほしい、『ゲルマニア』とは関係ない話からはじめる。
ミステリーというジャンルはどういうものであろうか。おれは先行するなにかにあたらず、自分の頭で考えてた。足りない頭で考えた。出た結論は「探偵役」が「謎」を「解明する」、というものだ。
「探偵役」は警察官でも探偵でも、巻き込まれてしまった一般人でもいい。ここに重きが置かれればキャラクター重視の小説になるだろうし、ハードボイルドやノワールになったりするかもしれない。
「謎」に重きを置けば、トリックがメーンとなる本格だとか新本格だとかになるだろうか。「解明する」に重きを置くのは、たとえば最初に読者に犯人や動機が示されていて……ようわからんが、ドラマの展開に重きをおくことになるのだろうか。
すべてのミステリー小説というのは、この要素で成り立っている……? かどうかはしらない。だが、それをどう色づけていくか、肉づけていくか、そこにミステリー作品の特色が出てくる。おれは、『ゲルマニア』を読みながらそんなことを考えたりした。
『ゲルマニア』を構成する要素はなかなかひねりにひねっている。インメルマンターン並にひねり込んでいる。事件は「連合軍の爆撃が日常化しているベルリン」で起きた「猟奇殺人」で、主人公は「SSに捜査協力を要請された」、「元敏腕刑事」の「ユダヤ人」なのである。
そんな時期にベルリンにユダヤ人? ナンデ? というと、彼の妻が生粋のドイツ人だったからだ。ユダヤ人が連行されていったとき、その妻たちが収容所を取り囲み、彼女らの夫を取り戻したという。本当にあった話かどうかは……。
みすず書房から出ている、
ナチス政権下、ユダヤ人と結婚したユダヤ人でないドイツ人も、強... - Yahoo!知恵袋
「語り伝えよ、子どもたちに」
という本の124ページに、ユダヤ人男性と結婚した非ユダヤ人女性数百名が、夫が拘留されたことに抗議し、ほとんどの女性が夫を取り戻すことができた、という記述があります。
などとネットにあったので(本の存在もネットで確認した。おれはこのくらいの根拠があれば、「まあそうなんだろう」というくらいに判断する)、本当にあったことなのだろう。
して、ミステリーというものが、ひねりにひねった設定であればあるほどおもしろいかといえば、そうでもないだろう。だが、この設定はなかなか興味深さを醸し出している。なんたって、主人公は捜査の依頼主にして協力者であるSSにいつ粛清されてもおかしくはないのだ。呉越同舟なんてもんじゃあない。そして、当時のナチス内の権力争いや、ドイツの人々の生活が細かく描かれ……、悪くないんじゃないの。
と、まあ、そんなところだ。「悪くない」だ。正直、この設定でこの内容、及第点よりは上。上から目線。まあ主人公がペルビチン(当時処方、市販されていた覚醒剤)を手放せなかったりとか、好きなところ(どういうところが好きなのか?)も少なくない。設定が設定だけに緊張感は常にある。ベルリンの描写も多くの資料にあたって描かれているようだ。とはいえ、疾走感にやや欠けた。「謎」についてもやや物足りないところがある。とはいえ、読んで損はしないんじゃないだろうか。うん。それじゃ。
>゜))彡>゜))彡>゜))彡>゜))彡

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- 作者: フィリップ・K・ディック,土井宏明(ポジトロン),浅倉久志
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