ありがとう、さようなら、イカちゃん

 見てくれこの22巻の表紙のイカちゃんの笑顔。ずっと見ていたくなる。ああ、しかしこれが最終巻。悲しい。悲しいけれど、おれの手元には『侵略!イカ娘』の22冊があるのだし、どこからだってかわいいイカちゃんを見ることができる。だた、これ以上新しいイカちゃんを見ることができるかどうかはわからない。そこにおれは涙する。
 とはいえ、おれは長年のイカちゃんのファンだったとは言いがたい。急に今年の年度末に目覚めた。「イカ娘の連載が終わる」という話をネットで見かけ、「そういえばアニメのイカ娘はかわいかった。金元寿子(以下娘役)のラジオを聴いて、本当にひーちゃんはいい子だなぁと思ったものだな」とか思って、単行本を買い始めたにすぎない。夏休みの短さと長さをいっぺんに味わったようだった。おれはこれから、しばらくイカちゃんロスに悩まされるのだろうか。
 と、おれは「イカ娘」のことをイカちゃんと呼んでいる。心情的には長月早苗に近いものがあるといっていい。とはいえ、おれが好きなのはイカちゃんと斉藤渚の関係の方が好きである。百合好きのおれがいうが、決してそういうものではなく、この二人(人なのか?)の関係が面白いのである。イカちゃんをおそれ、次第に物足りなくなり、プロデュースまでしてしまう渚。そこがいい。おれにとって一番のキャラはなんといってもイカちゃんだが、関係性という意味ではイカちゃんと渚、これである。
 とはいえ、限られた時間、空間の中で、キャラクターが現れ、それぞれ個性が出てくるおもしろみ。一方で、一定の世界をブレなく描き切った作者の安部真弘さんはすごいのである。話がどっかに逸れていくことなく、かといってマンネリにも陥らず、ときには腹筋を痛めるほど笑わせてくれた。無駄に(という言い方は超長期連載の漫画に失礼だろうが)引き伸ばされることなく、22巻というのもちょうどいい、と思う。本当にすばらしい。今後、イカちゃん以上のキャラクターをしてまた別の世界を描いてくれるのかもしれないし、それに期待したい。
 いずれにせよ、イカちゃんの連載は終わってしまって(もっともおれは週刊誌で読んだことはないが)、一つの世界は閉じてしまった。それでもなお、おれは終わらない夏休みを夢見てイカちゃんのことを思うだろう。イカちゃんは本当にかわいい。そして、『侵略!イカ娘』の世界は本当にすばらしかった。以上。

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