グッチ

 

本当にひさびさに雑誌というものを買った。Penという雑誌だ。はっきりいって、なんの雑誌かしらない。ただ、デヴィッド・ボウイ特集が読みたかったのだ。ボウイの特集は充実していた。ひさびさに買った雑誌というものに満足した。

が、ボウイの話は置いておこう。べつに特集されていたグッチの新作コレクションである。「このコートが96万円……!」、「このTシャツが5万円……!」、「毛の生えたスリッパが17万円……!」(いま、手元に本がないので価格はだいたい)。

おれはファッションというものにまるで興味のない人間なので驚愕した。驚愕したと同時にグッチというものの柄物の人の嫌がるような雰囲気、バッドテイストな感じは正直いいな、と思った。思っただけで、買えるわけじゃあない。おれの購入能力からすると、0の数が2つ、いや、3つ違う。でも、総花柄いいなぁ。

しかしまあ、どういう人がこういう服を買うのか。やはり金持ちがシーズンごとにポーンと買ってサクッと着るのか。そこまで金持ちでないファッションマニアが金を貯めて買うのか。しかし、この奇抜なのを着てどこに行くのか。人類の先行きよりわからない。成人式か。いや、おそらく、なにかセレブな、なにか、パーリーがあって、そういうピーポーがスリッパで。あるいは、中居くんが、36万円のジャージと96万円のスカジャンみたいなの着て、そこらのコンビニにVIPカーで行くのか。それともタイの王族がバカンスで着るのか。王族ピーポーなら着こなせると思う。しかし、どの想像もぼんやりしすぎていてまったくよくわからない。グッチ。

というわけで、おれの今年の目標はグッチの柄物を(古着で)買うことである。買ってタイの王族のパーリーに行くことである。ちなみにおれは目標を立てることと目標に向かって努力することが嫌いである。

……しかし、PenをWikipediaで見ると「所得の高い30代、40代が読者層の中心」とあるが、ほかに紹介されたりしているものも「お、このカバンかっこいい」と思ったら36万円でした、とか「このデジカメの本体111万円や(ハッセルブラッドの中判だけど)」とか、そんなんばかりだ。Penを買う所得の高い人の世界、これもまた自分とは無縁であって、世界は分断に分断を重ねているのだな、と思わざるをえないのであった。灰は灰に、塵は塵に……。