ギャンブル依存症サバイバル ―パチンコ・スロット・競馬・競輪におぼれる人を救済するため、患者・家族・医療者に贈る指南書
- 作者: 熊木徹夫,ギャンブル依存症研究所
- 出版社/メーカー: 中外医学社
- 発売日: 2015/08/24
- メディア: 単行本（ソフトカバー）
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おれは立派なギャンブル依存症である。おれがよく見る夢は、空を飛ぶ夢ではない。買いたい馬券があるのに、なんらかの障害があって買えなくなる悪夢である。手が震えてマークシートをうまく塗れないとか、ネット回線につながらないとか……。
とはいえ、おれがこの本に記載されているDSM-5、SOGS、GAによる20の質問に答えると、いずれもギャンブル依存症という結果にはならない。あるいは、本書の著者である熊木徹夫医師が「あたりをつけられる」というたった一つの質問にもノー、なのだ。
ギャンブル依存症は先にあげたような質問票でも精査することもできますが、熊木は「もっと簡単に―たったひとつの質問で―あなたがギャンブル依存症かどうかのあたりがつけることができる」と言います。
Q.あなたはギャンブルのために借金をしたことがありますか？
これが、ないのである。ニート時代に親から小遣いをせびって馬券を買ったことはあるが、もう十分に返したという自覚もある。ともかく、借金などおそろしくてできたものではない。おれはおれの生活できる範囲でしか生きられない性質である。おれがいくら毎週末あるいは地方のビッグレースで馬券を買おうが、借金までしてというのは想像の埒外である。おれはおれが負ける範囲でしか負けない。ただし、おれは馬券を買うことはやめられない。「ハマりこむギャンブルのほとんどがパチンコとスロット」と本書にはあるが、おれはパチンコもスロットも一度たりともやったことがない。何重かの意味でこわくて入れない。やり方がわからない。となると、おれは本書の想定する「ギャンブル依存症」ではないのかな、などとは思う。が、おれの収入に対して、おれの馬券購入額は決して少なくない。だから、こんな本も読む。一方で、少しでも回収率を上げられないものかと、月刊競馬雑誌を買ったりもする。まったく、どうしたものか。
というわけで、おれはギャンブル依存症ではなく、競馬依存症なのかもしれない。そのあたりはよくわからない。それが「男性ナルシシズムの死」と関係あるかもわからない。
しかしまあ、なんというか、それにしても、これからがエントリーのタイトルと関係あることなのだけれど、本書で取り上げられているギャンブル依存症者は、なんか配偶者や家族に恵まれているのよな。ギャンブルで作った借金数百万円を家族が返済した（それでもやめられない）とか。その数百万、恵まれているよな。おれがもしギャンブルでたかだか数十万円の借金を作ったところで、おれを助けてくれる（助けられる）配偶者も家族、親類縁者も存在しない。そういうお金の工面をしてくれる人間が存在せず、「ギャンブル依存症外来に行きましょう」という人間も存在しないゴミクズはどうなるのであろうか。おそらくは、「お馬で人生アウト」と、ひとり孤独な自殺をしているに違いない。
著者のサイトにしても、なにか配偶者がいること前提であるし、本書で紹介されている「熊木メソッド」にしたって、配偶者や家族がいること前提で念書だのなんだの言っている。独り身はどうなるのか。
このような、「なんとか依存症とか、なんとか障害になった人間の告白や事例収集は、なんだかんだいって恵まれた境遇にある人間ばかりよな」と思うことは少なくない。本書に限ったことではないと思う。医師にしたって、なにか本を書くとなれば成功事例を書きたいだろうし、それが当事者の希望になると思っているのかもしれない。が、恵まれてるんよ、救われた事例の人間は。
たとえば、今日の今日読んだこの記事にしたって、なんか恵まれたパートナーがいるわけであって、救われるのはそういう人間ばかりだろうか、と独り身独居の精神障害者でアルコール依存症、ギャンブル依存症のおれは思うわけだ。おれが最高に苦手とするのは人間関係であって、おれが最高に頼りたいのは薬物にほかならない。薬物といっても処方薬だが。
というわけで、どうにも独り身独居の精神障害者は末路は悲惨なものであると決まっているようであって、当然のように働けなくなるし、この不景気なご時世、この国で福祉に頼れるはずもなく、独りしずかに消えていくだけなのだろうな、などと思う次第。しかし、もしできるのであれば、だれかに褒められるような道連れを作ろうという意志は今のところある。が、そういう意志を失い、判断がつかなくなったところに本当の末路があるのだろうという諦念もいだいている。
以上。
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あ、この本の感想でも似たようなこと書いてる。
とはいえなんだ、しかし、斜め下からの意見になるけど、出てくるエピソード、どれも親類縁者が200万円とか500万円とかの借金を肩代わりしていて、ひょっとすると親戚一同貧乏みたいな状態だと、借金もできないし、肩代わりもできないし、そもそもパチンコという結構元手のいるギャンブルに参加できナインテイルズかと思ったりもした。
