『ビッグ・イシュー』は人のためならず

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おれは先週、関内駅前で『ビッグ・イシュー』を買った。450円だった。500円玉を出したら、お釣りを渡そうとするので、「あ、べつにいいです」と言った。

関内駅前、スタジアムへ行く方の出口に『ビッグ・イシュー』を売る人が現れたのは何ヶ月前だったろうか。おれは普段、関内駅を利用しない。というか電車を利用しない。ただ、月に一度、精神科に通うとき前を通るのだ。

『ビッグ・イシュー』。

www.bigissue.jp

ホームレスが売る雑誌。その売上から、ホームレス脱却を目指す。そういう雑誌だ。おれが買った最新号の表紙は、カズオ・イシグロで、カズオ・イシグロのインタビューなどが載っていた。あとは、市民と科学の関わり方とかいろいろ。

その『ビッグ・イシュー』を売る人は、スラスラと口上を述べてアピールする。おれはそれに気づいた。だが、なんとなく無視した。おれとてこれから行く病院も処方される薬も自立支援医療の制度を使っているくらいだ。仕事も減り、自分の先行きもわからない、明日は我が身……。

むろん、いいわけだ。いいわけをして、こころのどこかに引っかかりを持ちながら通り過ぎていた

が、なぜ先週は買ったのか。答えは簡単である。週末日曜日に競馬の祭典である日本ダービーが行われるからだ。ここで善い行いをすれば、神様のようななにかが見ていてくれて、ダービーの馬券が当たるのではないかと思ったのだ。それが背中を押した。だれだって背中を押されるのを待っている。

その結果、どうだったか。ダービーは外した。だが、ダービー前日の土曜日、中京のメーン競走を当てた。

葵ステークス|2021年05月29日 | 競馬データベース - netkeiba.com

単勝8300円、馬連26,560円×2。あ、それぞれ100円がその金額になるという公営競技の言い回しです。83倍、265.6倍。

おれの馬券はあまり当たらないし、高額配当となればなおさらだ。やはり神様のようななにかが見ていてくれたのだ。おれはそう思った。

人気薄で勝ってくれた騎手の名前は亀田温心(かめだ・はーと)。本名だ。まだ若い騎手だ。温かい心、すばらしいじゃないか。おれはいくらかのケチな温かい心で『ビッグ・イシュー』を求めた。お釣りを受け取らなかった。たぶん、450円が馬連で、お釣りの分が単勝なのだろう。辻褄はあう。

というわけで、おれはたぶん、今月、医者に行くときにもビッグ・イシューを買い求めるだろう。なぜか? 神様のようななにかが見ていてくれて、おれに幸運をもたらすからだ。『ビッグ・イシュー』は情けにあらず、人のためならず、おれの万馬券のためにある。もう、二冊買ってしまおうか。

この競馬必勝法、あえて秘密にしないで公開しよう。ぜひ真似してみてくれたまえ。むろん、『ビッグ・イシュー』以外でも、なにか善い行いをしたら、それで返ってくる可能性もある。ちょっと時間が空いて返ってくるかもしれない。

と、競馬必勝法を真に受けて馬券を買って外したからといって文句を言うのは、野暮なことなので、そこんところはよろしく。