さようなら、「最強馬」イクイノックス/皐月賞以降全レース振り返り

イクイノックスが電撃引退 G1・6連勝&歴代最多総獲得賞金更新のジャパンCがラストラン 有馬使わず種牡馬入り | 競馬ニュース - netkeiba.com

先週のジャパンCでG1・6連勝となったイクイノックス(牡4歳、美浦・木村哲也厩舎、父キタサンブラック)が現役を引退することが11月30日、分かった。

 

イクイノックス引退のニュース。「電撃引退」と見出しにはあるが、べつに電撃でもないだろう。ジャパンカップ前からラストランのニュアンスは馬主であるクラブ側から出ていたし、レース後のルメールと木村哲調教師の涙もそれを物語っていると思っていた。

 

2023年 ジャパンカップ回顧 「世界最強馬」イクイノックスよ - 関内関外日記

 

だからおれは、ジャパンカップの回顧のタイトルを「さらば世界最強馬イクイノックスよ」としようかと思ったが、直後にあると思っていた引退発表がなかったので、「さらば」は取った。会員のため、四歳引退と引き換えに有馬も獲りに行くのではないか、という憶測もないではないかった。

 

おれはもう、引退でいいと思っていた。べつに人様の馬だからなにも言う権利はないが、一競馬ファンとしては、もう十分だろうと。そりゃまあ、今年の凱旋門賞走ったらどうだったか? とか、思うところもあるが、もうこれ以上レースを見るのは「怖い」のだ。もし故障したら、取り返しのつかないことになったらどうなる。

 

ディープインパクトの引退時に、日本競馬史上類を見ない馬主である金子真人はなんと言ったか覚えているだろうか? (長くブログをやっていると、ディープインパクトの引退のときの日記が出てくるのだ)

 

流れよ我が涙、と金子真人ホールディングスは言った - 関内関外日記

「今の気持ちは、ふぬけになったような、悲しいような、寂しいような。でも、あと1年間走りを見守るには、私のハートは小さすぎた」。

 

おれは一馬券購入者に過ぎないが、おれのハートも小さい。イクイノックスはよく走った。この秋の天皇賞もジャパンカップもすごすぎた。もういいだろう。これ以上は怖くて見ていられない。ブラックタイド→キタサンブラックと引き継ぐ意外の血を伸ばしてもらいたい。そう思う。

 

それにしてもイクイノックス。おれとイクイノックス。おれはイクイノックスをどう思っていたのか。

タイトル - 関内関外日記

皐月賞はデシエルトでいいのではないか。

皐月賞はデシエルトを買った。でも、こんなことも書いている。

日本ダービーに向けた能力としてはダノンベルーガ、イクイノックスを上位に取っている。イクイノックスは間隔が空きすぎているので皐月賞で能力を確認する必要があるだろうが。

 

皐月賞の結果。

2022年皐月賞 ダービーで狙いたい馬は外してみたけれど…… - 関内関外日記

とりあえず、日本ダービーに向けてイクイノックスとダノンベルーガの評価が上がった一戦だった。

 

どうもイクイノックスとダノンベルーガをダービー候補と考えていたようだ。

ダービー前。

2022年 日本ダービー金曜日見解 - 関内関外日記

イクイノックスは二歳の時点で「ダービー候補や」と思っていた。が、そっから皐月賞まで出てこない。その間にダノンベルーガを見て「ダービー候補や」と思ったわけだが。で、その二頭が皐月賞で負けはしたが「ダービーで巻き返しそう」という「いかにも」な競馬をして、さて本番。

これだけ考えたらイクイノックスとダノンベルーガの折り返しから三連単数点というような馬券が考えられるが、ダービーだぜ。やはり確固たる本命馬を決めて、そこから勝負したい、ダービーに参加したいという気持ちになる。

なった結果、どちらかといえばイクイノックスということになった。

 

 

 

イクイノックス本命を決めたようだ。

 

2022年日本ダービー回顧 武豊にはかなわない! - 関内関外日記

おれはドウデュースをなめていた。アイビーステークスの勝ち方などから「これはダービー馬だ」と思うことはなかった。皐月賞で気づくべきだったかもしれない。それでも、武豊をなめていた。イクイノックスのルメールも一瞬の脚を最後に炸裂させた。それは見事なものだった。しかし、その前には天才がいた。そういう話である。

 

おれはいまもドウデュースをなめぎみなところはある。あと、イクイノックスを「一瞬の脚がすごい馬」と認識していたようだ。

 

2022年 天皇賞・秋 記憶に残るが忘れたい - 関内関外日記

思い出したくないので簡潔に。本命はイクイノックス。「G1も勝っていない3歳馬が1番人気で?」という思いがないでもなかったが、考えても考えてもイクイノックスが勝つイメージしかなくて、テレビでパドック見ても相変わらずの見栄えする馬体で、これしかないやろ、と。

 

思い出したくないのはなぜか。パンサラッサとの馬連……。しかしもう、かなりイクイノックスの能力を信じていたようである。

 

2022年 有馬記念回顧 イクイノックスは強い! - 関内関外日記

イクイノックスが勝つ、というのはけっこう前から決めていた。決して中山苦手というわけでもないはずだし、なにより能力が違う。父もキタサンブラックで有馬記念走っていい。ともかく、イクイノックス頭固定はけっこう前から決めていた。『競馬の天才』誌が表紙で「イクイノックスで決まりだろ!」をやる前から決めていた。

 

おれが個人的にイクイノックスの戦績で好きなのは、有馬記念を勝っていることである。おれは東京2400m至上主義者ではあるものの、そこだけ強くても最強という感じがしない。暮れの中山2500mという癖の強いステージ「でも」勝つ。それが強いってことだ。

 

2023年 高松宮記念&ドバイWCデー - 関内関外日記

ドバイシーマクラシック。初の海外、ナイター、いろんな要素はあれど、イクイノックス一着固定の三連単勝負。二着、三着で荒れてくれ馬券。で、レースはイクイノックスが逃げる。これはさすがのルメール。そして、驚きは直線の持ったまんま。いやはや、強すぎる。しかし、逃げてよしとなると、無敵じゃないか。むろん、適した馬場というのもあるだろうけれど。二着、三着はかすりもせず。

 

海外競馬ということもあるが、なんと逃げての楽勝。いやはや、だ。

 

2023年 宝塚記念回顧 イクイノックスは強かった - 関内関外日記

で、直線、イクイノックスは大外を選択。というか、それしか選択肢はない。ぐんぐん伸びてくる。でも、大外すぎるのでは……? と、思ったら、しっかり伸びてきて差し切った。格が違う。ディープインパクトかお前は。というか、そのクラスの馬になりつつある。秋、どこに行くのかわからんけど、この秋全勝したら「歴代最強馬」クラスに名を連ねることだろう。そのためには東京2400mのG1勝ちが欲しいと思うので、ジャパンカップしかないが。それにしても、いろんな競馬場、いろんな位置取り、この自在さはなんなのか。底知れないところがある。これがキタサンブラックの子で、母父キングヘイローというところも面白い。

 

もちろんイクイノックス本命。このレースはジョッキーカメラでルメールが「全然進まなかったよ!」みたいなことをレース後に言っていたので、けっこう危ないレースだったかもしれない。それでも差し切った。おれのなかで「歴代最強クラス」という言葉が出てきた。有馬に続き、やはり癖の強い宝塚記念で勝ったのも評価したい。

 

2023年 天皇賞(秋)回顧 絶対の王座と、ガイアフォースに見た夢 - 関内関外日記

いずれにせよ、今年限りでイクイノックスは去る。その後はリバティアイランドが席巻するのか、今年の三歳牡馬勢がやってくるのか、今回出なかったローシャムパーク、プラダリアあたりが頂点を目指すのか、気は早いがそんなことを気になってもくる。いずれにせよ、イクイノックスが王座にあって、その盤石さを見せた天皇賞(秋)だった。ジャパンカップでケチをつけるところがあるとすればレース間隔くらいだろうが、そのあたりは調教師の会見のテンションで判断することにしよう。

 

もうこのあたりで、ジャパンカップで引退と思っている。馬券はもちろんイクイノックス絶対一着だったが、当然のように相手を間違えている。

 

2023年 ジャパンカップ回顧 「世界最強馬」イクイノックスよ - 関内関外日記

イクイノックス一強という点は当たったので、まあ悪くはない。最強馬論争のようなものがあって、おれはそれが好きだかどうだか自分でもわからないのだが、イクイノックスはそこに入ってくるだけの馬だろう。そしてもう、引退だろう。おれは引退してほしいと思う。

 

引退レースもイクイノックス一強と見て馬券を買う。やっぱり外している。

 

なんと、おれは皐月賞一戦を除いて、あとはすべてイクイノックスを本命、それも大本命にしている。おれは、イクイノックス好きだったんだな。ああ、おれは馬券はせこい穴狙いをするが、絶対的に強い馬の存在は嫌いじゃないんだ。相手におれの買った人気薄を連れてきてくれて、少波乱になればなおさら好きだが。

 

これだけ信頼した馬は、いつ以来だろうか、もうぼけているので思い出せない。「ひょっとしたらそうなるのでは?」とちょっと思ったスキルヴィングはそうなるかどうかまったくわからないまま死んでしまった。

 

いずれにせよ、今後何十年も、イクイノックスは「日本競馬史上最強馬論争」に名前を連ねるだろう。圧倒的なタイム、勝ち方、そこにいるにふさわしい。ワールド・ベスト・レースホース・ランキングという、ある程度は一定の基準においてジャスタウェイ以来の「世界最強馬」だったのも確かだ。

 

しかし、なによりその強さをおれは見てきた。いまこの瞬間、おれはイクイノックスを「最強馬」と言いたい誘惑に駆られる。

 

まあ、どんな称号も意味はないだろう。べつにおれが語り継がなくても、だれかが語り継ぐだろう。けれど、おれも語り継ごうじゃないか、おまえの強さを。さようなら、イクイノックス。その子らがターフに戻るその日まで。