古いスウォッチを買う

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中学の入学祝いに伯母(母とは仲の悪い方)から腕時計をプレゼントされた。青い革ベルトのスウォッチSwatch)で、文字盤部分はスケルトン、そしてなにかオルゴールのような音が流れるやつだった。そのスウォッチの寿命は大したもので、時計交換もせずに、それはずいぶん長く動きつづけた。あるとき、ベルトが切れてしまったのでそのままにして、どこかにやってしまった。とはいえ、「スウォッチ」というのは見た目の割には頑強なものなのだな、という印象を持った。

2018年、スウォッチというものが腕時計世界にあってどのようなポジションにあるのか知らない。はるか昔、流行したような気もする。ひょっとすると、プレゼントにもらったそのときが、そのときだったのかもしれない。いずれにせよ、今は2018年だ。

2018年のおれはiPhoneでメルカリを見ていた。腕時計が目に入った。おれは腕時計が好きか嫌いかでいえば好きだ。本田圭佑のように両腕につけるほどではないけれど、外出のときには必ずつける。2018年のおれはiPhoneでより精確な時刻がわかるというのに、腕時計をつける。

そして、ふと思ったのだ。昔プレゼントされたスウォッチのことを。ためしに検索してみる。ベルトのないもの、電池の切れたもの(すなわち動作確認できない)、いろいろある。なかには、動いているものもある。そんなに高くない。おれは思わず一本目のそれ(というわけで二本目もすでにあるわけだが)を買うことにした。それが写真のスウォッチだ。文字盤の下の方に書いてある数字を見ると1999……いや、1993とある。

使い始めて数日、留め具部分のベルトが剥がれた。あ、剥がれた、と思って開いてよく見たら、今度は時計本体と両側が同時にベリベリっと剥がれた。ダメ元で瞬間接着剤を塗って洗濯バサミで挟んで一晩経ったらくっついた。とりあえず、くっついた。

というわけで、古いスウォッチはおれの腕で動いている。カチカチと秒針がうるさい。おれは、置き時計は(疑似?)スイープ運針でないと嫌なタイプだが、まあ腕時計がカチカチいうくらいは構わない。ましては、安物のご老体だ。高くていいものを買って長く使う? 安いものを次々に買い換える? 安いものを長く使う。それでいい。