おれの母……というと、おれが今年で四十歳になったのだから、それなりの歳だろう。その母が、手術をして、二重まぶたになった。
美容整形? 違う。加齢による眼科下垂というものだ。適当に検索して出てきたサイトから引用させてもらう。
眼瞼(まぶた)の手術はどうも美容系というイメージが強く、保険適用外だと思われがちですが、眼瞼下垂は保険適応の疾患です。
というやつだ。
眼瞼下垂は保険適応の疾患ですので、意外と低料金で手術を受けていただくことができます。
どのくらいが意外で、どのくらいが意外でないのかよくわからないが、まあそういうことらしい。
というわけで、母は二重まぶたになった。二重まぶたになってしばらくは、まだ治療の跡みたいなものがあって、少し赤くなっていて、ちょっと見るのが怖かった。
しばらくすると、赤みがなくなった。普通に二重まぶたになった。が、なんというか、違和感がある。おれが何十年と見てきた母は二重ではなかったからだ。
本人はというと、見た目がどうこうというよりも、視界が大いに広くなったことに感動しているようだ。視界が広くなったら、それはいいことだろう。
関係ないが、おれは、ガッと目を見開いて、そっと戻すと、二重まぶたになる。そういうテクニックを持っている。が、その状態での二重まぶたは目が変な具合に見開いているので、なにかガンギマリのようであって、「それは変だ」と言われる。
眼瞼下垂というものがどれほど遺伝的なのかはわからないが、将来おれも二重まぶたになる手術を受けるかもしれない。ただ、心の視界はいつでも広くありたいものだと思う。なに、良さげなこと言ってんだか。