採血、低血圧

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「男の人に言っちゃうのは失礼かもしれないけど、腕、きれいですね。いや、たくさん採血するんですけどね」

おれはおれの主治医にそう言われた。

おれの正面には誰もいなかった。おれは左腕を左に差し出し、血を抜かれていた。おれは極度に緊張していた。おれは注射というものがものすごく苦手だからだ。正確には、注射を想像することが、おそろしく苦手だからだ。

さて、四十の男の腕がきれいかどうかなどはどうでもいい話だ。おれは月一回の精神科への通院で、採血をした。先月、「あれ、ぜんぜん血液検査してないですね。来月、食事のあとよりはいいから、朝来てください」と日時を指定されたのだ。おれはいつも、一週間前くらいに、会社に人がいなくないタイミングで予約をとっている(零細企業では本当に「無人になる」という危険性がある)。でもって今回は、一ヶ月目から予告された注射なのである。おれは注射のことを頻繁に考えるようになっていた。おれはそれくらい、注射が苦手なのだ。

注射の前に、「血圧測っておきましょうか」と言われた。おれは注射を前にしてドキドキしているのだから、血圧も高まっているのかと思った。思ったら、「あれー、低いですね」と言われた。上が90、下が65ということだった。そう告げられても、おれはどの程度低いのかさっぱりわからなかった。だいたい上は100以上あるものらしい。「薬のせいかなー」などと言われた。

www.healthcare.omron.co.jp

なるほど、検索してみると、おれの血圧は低いようだ。しかし、高血圧は要警戒事案のようだが、低血圧はそうでもないらしい。

が、どこのサイトだったかわからんのでリンクは貼れないが(オムロンくらいには信用できそうな製薬会社のサイトだったと思う)、糖尿病の症状として低血圧、というのもあった。これはおそろしい。おれが血液検査などするのも、おれの持病である双極性障害に効く抗精神病薬が「糖尿病禁忌」であるがためだ。もしも、おれの低血圧が糖尿病原因だとどうなる? おれの愛するジプレキサ(オランザピン)を服用することができなくなり、ひょっとしたら血中濃度を安定させなければならない(=毎月採血?)のリーマスに変わったりするかもしれないのだ。

ええい、この際、採血などどうでもいい。ジプレキサ(オランザピン)が処方されてからのおれの安定、安心、これが失われるのがおそろしい。来週の頭あたりにおれの携帯が鳴って、「血液検査の結果、あんたやばいから医者に来て」と言われるのがおそろしい。おれは、炭水化物をひかえ、野菜ばかり食って生きているのに、そんなことがあったら悲惨じゃあないか。

……とかいいつつ、ガンガン酒飲んでるんだけどね。ストロングゼロのロング缶を開けたあとに、バカルディのラムをロックでごくごくしたりしている、今。ああ、もう、やばいな。γ-GTPがやばいな。肝臓がだめだと、薬もだめでしょう? おそろしい話だ。依存症を併発しやすい双極性障害のおそろしさだ。しかし、医師の「このごろ楽しいことはありましたか?」という問いに、「そう言われると、とくには……」としか答えられなかったおれ、同じ質問をべつの人からされて同じ答えをしたおれ、酒くらい飲まなきゃやってられんじゃないの。なあ。……ああ。

 

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