桜玉吉が60歳になる世界線―『伊豆漫玉エレジー』

 

伊豆漫玉エレジー (ビームコミックス)

伊豆漫玉エレジー (ビームコミックス)

 

おれが死ぬか作家が死ぬかどっちか先かわからないけど死ぬまで書いつづけると決めている漫画家といえば桜玉吉をおいて他にいない。

おれと桜玉吉桜玉吉とおれ。出会いはファミコン通信だった。以下、今まで桜玉吉の単行本の感想に書いてきたことなので略。勝手に検索してみてください。

で、単行本の帯にはこうある。

人里離れた山奥で自然と格闘を続ける漫画家・桜玉吉、御年60歳。

玉吉もなあ、……60か! これは一つの衝撃だ。なぜか「こんな世界線が」と思い浮かんでしまった。いや、まだまだ元気でやっているのだからいいじゃないか。そしておれもまだ漫画を買うくらいの生活をできている。悪くない話じゃないか。うむ。

しかしなんだろうか、「60歳の漫画家が伊豆山中で暮らす」漫画じゃあないんだよ、変な話。やっぱり東京育ちなんよ、玉吉は。延々と続くムカデとの戦い、いっつも車乗って、コンビニ行って、温泉行って、なんというか自然の中に馴染んでねえんだわ。少なくも、漫画で描かれる伊豆山中は「いつだって緊急事態」(帯)なんだな。

だからなんつーのか、虫、車、コンビニ、温泉の繰り返しだけれども、なんつーのかまだ闘っているというか。ちょっと血気盛んな玉吉アニキという感じもあって、まだまだやれるぜ、という気にもなる。

これまた、何度か書いたと思うが、今、いきなりこの単行本を桜玉吉未読の人に勧められるかというと、はっきり言って勧められない。人によって違うだろうが、おれにとっては『しあわせのかたち』からの三十年以上の歴史があって、この本を買う。そして読む。もうおもしれえとか、そうじゃないとかじゃねえんだよな。

だからちょっとさ、「そういえば昔ビームで読んでいたっけ」とかいう人、ちょっと買ってみてはいかがですかね。作家は短命に限る、なんて言わんで。

そんでなんか、なんというのかまた玉吉が鬱におちいることは望まないが、伊豆からさらに反転攻勢というか、漫画喫茶生活に戻れとも言わないけれど、そろそろ新境地、あるいはなんか旅、そう、ちょっと旅漫画でも書いてみてくれんものだろうか。めざせ、つげ義春先生、というわけでもないが。なんかちょっと、そんな企画物を久々に読みたいなと思ったりもするのだ。

あとはもう、わりと早く老境に入りたがってた感じもするし、真の老境まで書きつづけてください、と言うしかない。

桜玉吉『伊豆漫玉エレジー』が本日発売、還暦を迎えた玉吉先生と担当のプチ対談をお届け 「お元気ですか?」「元気じゃないよ(笑)」(1/2 ページ) - ねとらぼ

長生きしてください(笑)。若い読者がいないので、一蓮托生で長生きして本買ってください。

一蓮托生、おれも長生きするぜ。

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ブロイラーおやじFX+ (ビームコミックス)
 

……今なら完全にアウトな漫画だなと思うが、昨年末の日付でKindle版って出てるな。もちろん本を持っているけど、買うか。