プロ野球九回打ち切り派宣言

今年の日本プロ野球のリーグ戦は、新型コロナウイルス流行の影響で、延長戦なしの九回打ち切りということになった。

おれは今年、二試合を除いて(J-SPORTがサーバーダウンをやらかした開幕戦と大敗したこないだの日曜日)カープ戦を観た。

そして、思ったのである。

「野球って九回打ち切りのほうが面白くね?」

むろん、日本シリーズやトーナメント制の大会で打ち切りはできない。勝者を決めなければいけないからだ。でも、リーグ戦なら引き分けがある。

実際、引き分けは増えているという。

9回打ち切り導入で今季の引き分けは12試合 過去最多の引き分けだったシーズンは?― スポニチ Sponichi Annex 野球

 コロナ下での2年目のプロ野球のシーズン。今季導入された9回打ち切りルールは、戦い方にも変化を与えた。開幕5カード、計88試合で早くも12引き分け。シーズン858試合換算では117試合ペースとなる。

 プロ野球で最も引き分けが多かったのは、12年の両リーグ合計74試合で、前年の11年も合計56試合あった。

最多を記録した年は、東日本大震災の影響だ。そして、今回はコロナ。終わってみなければわからないが、おそらくはシーズン最多記録になるのではないか。

まあともかく、今年の野球は九回で終わり。延長なし。これについて、解説者(たしか里崎智也だったと思う)が「延長戦を見据えた終盤の駆け引きが面白い」というようなことを言っていたと思う。おれも、シーズン前はちょっとそう思っていた。「もうキャッチャーがいないから曽根海成にやらせよう」とか、「投手がいなくなったから、高校時代エースだった外野手に投げさせよう」とか、そんな非常事態も嫌いじゃない。

が、実際に九回打ち切りが決まって、それを前提に両チームが「九回打ち切り」に向けて駆け引きするほうが、なんかスッキリ、清々していて、観ていて楽しいのだ。引き分けの可能性があったら勝ちパターンを惜しみなく投入するし、代打、代走もがんがん出す。

……って、駆け引きじゃなく総力戦かな。そうかもしれない。でも、それがいい。延長を見据えてちょっと調子の悪いセットアッパーを引っ張って打たれるとか、そういうグダグダがない、はずだ。ここで代打の切り札を使うかどうか、となれば、九回までだ、行け! となる。なんかテンション上がるのだ。例えるなら、競馬のゴール板前。全馬力いっぱい走ってるような、そんなイメージ。バテて歩いてるとか、前がどん詰まりとか、そういうのは考えないで。

で、興行としての野球にとっての課題として、試合時間の短縮というものがあるらしいが、なに、これでいいじゃないか、九回打ち切り。九回までの総力戦。終盤の出し惜しみなし。これがいい。というわけで、おれはプロ野球九回打ち切り派」になった。それをここに報告しよう。

それにしてもなんだろう、今四十代のおれ、それよりももうちょっと上の世代だろうか。「父親が見る巨人戦の放送延長で見たい番組が観られなかった。だから野球が嫌い」という人も少なくない。今やもう地上波でプロ野球中継なんてのもめっきり減ったし、ごくたまにやったとしても延長なしが当たり前。テレビも一家に一台というわけでもなくなり、携帯端末やタブレット、PCで好きな時間に配信を観られるようになった。「プロ野球の放送延長で」という話も、もう今の人にはぜんぜんピンとこない話だろう。むしろお父さんのほうが携帯の小さな画面でDAZNを見ているかもしれない。野球もメディアも力関係というものは変化していく。