エレクトロニック動き対最強米帝艦隊(未完)

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ポケットロケットブースターの噴射が終わったおれはヴェルニー公園の歩道に激しく体を打ちつけられた。ボロボロのジャージがさらに擦れて、破れた。

おれはフー・マンチューに授かった超電磁アンテナで目的の米帝艦船を探査した。対ESP要員の妨害が入ったが、即座に脳を焼き切って殺した。この任務が露見するのは前提だ。なにより必要なのはスピードだった。

 

話は3日前に遡る。おれは寿町の喫茶「つどい」にいた。紙パックから注がれたアイスコーヒーを飲みながら、目の前の男の目を見ていた。男の目は濃いサングラスに遮られて見えなかったのだけれど。

「これが、ブツだ」と男。

「これが、ブツか」とおれ。

おれはブツを受け取った。そして、アイスコーヒーのグラスを乾杯するように持ち上げた。サングラスの奥で男の視線が動いた。そして男の記憶は過去28日間に渡って失われた。フー・マンチューから授かった超電磁記憶消去能力サイキックを使ったのだ。

ブツを受け取ったおれは、店を出た。不織布マスクをして、ジャイアントのクロスバイクにまたがった。電動改造を施されたジャイアントのジャイアンクロスバイクは、おれが漕ぐことなく発進した。

干渉電波を避けて、おれは横須賀を目指した。磯子の海沿いではなく、いったん内陸に入り、134から遠回りして横須賀に入った。途中で三人の浮浪盗賊を金属バットで殴り殺した。死体自動回収車とすれ違った。このごろはすべてがオートメーションだ。おれのクロスバイクもオートマチックだ。ジャイロで姿勢制御されたクロスバイクは、おれが両手で19年前の『競馬の天才』5月号を読んでいても、まっすぐに進む。海沿いの道をまっすぐ進む。電子野良犬や機械化フェレットは強い電磁波を感じて道を開ける。

問題は電気熊だった。このごろの横須賀には電気熊が出る。電気熊は坂道を苦にしない。横須賀の住宅事情にはぴったりの連中だった。電気熊はそこに住んでいた人間をあらかた殺してしまうと、坂を下って国道を走る車を襲うようになっていた。

おれは最大限の警戒をしてクロスバイクを走らせた。脳内の電磁波レーダーに大きな赤い点が浮かんだ。運の悪いことだ。目ズームで確認すると、中III型級電気熊が折れた電柱の後ろに隠れている。

おれは射程に入るとクロスバイクを止め、バックパックからAK-74を取り出して電柱に向かって乱射した。電気熊はエレクトロニック動きでガードレール沿いを突進してきた。おれもAK-74を乱射しながら電気熊に向かってウラー突撃を敢行した。それが我が軍の流儀だった。

電気熊は突進の勢いを失わない。おまけに電子戦を仕掛けてきた。おれの視界を奪いにきたのだ。おれは全電磁波遮断をした。AK-74を放り捨て、バックパックから令和22年型軍刀を取り出して、無明逆流れの構えをとった。

電子熊のエレクトロニック爪がおれの顔面を捉えきたその刹那、おれのハイスピード軍刀動きはやつのメインユニットを両断していた。力ないエレクトロニック爪がおれの頬を傷つけた。

 

そして話は今に戻る。おれはフー・マンチューから授けられた秘伝海渡りで目的の軍艦に近づいていた。188秒前から呼吸を閉じている。ここで呼吸をすれば、米軍の対吸気ファランクスが火を吹く。おれの身体は一瞬で粉微塵になるだろう。

 

(未完)