おれはヒモに向いているのではないかと思うことはある

寄稿いたしました。

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なんか子供のころから「なにものかになりそう」と思われがちだったという昔話です。一つ書き忘れましたが、ただスーツを着ているだけで、母方の祖母から「小説家みたいだねえ」と言われたこともあります。おれは物書きになりたいとも言ったこともなく、なにか書いたものを読ませたこともありません。ただ、見た目だけです。小説家ワナビーどころか、見た目だけ小説家風。すごくないですか?

 

まあしかし、おれのこの生まれ持っての怠惰さ向上心のなさ、すべてのやる気を根こそぎにする精神疾患、なにより本当に才能はない空っぽであることを考えると、「なにかやりそうな人だったかもしれない」と思われて死んでいく確率は高い。孤独死の確率はもっと高い。

 

というわけで、なにもやらないで生きているわけだが、生きるためには働かなくてはいけないので、適当に働いている。働くのが好きかといわれると、嫌いである。子供のころは勉強が嫌いだったし、働くのも嫌いだ。なにかさせられるのは嫌いだ。本質はニートだ。ひきこもりだ。

 

が、ニートでいるにはすごい資産があるか、養ってくれる人が必要である。前者が無理となると、養ってもらいたいということになる。残念ながら親は頼れない。大学を中退してぶらぶらニートしていたころは頼れた。が、会社経営に失敗して、一家離散となった。もちろんその後、両親が再起して金持ちになったという話もない。ほかにおれに金を残してくれそうな親戚も心当たりがない。

 

というわけで、おれが人生を満喫するためには養ってくれる人が必要である。そこでおれは思うのだが、おれの前述の特性と相まって、おれはヒモに向いているのではないか? ということだ。

 

身長のことは置いておいてもらいたい。

 

売れないバンドマンを養う女の人、なんてのはよくある話じゃないか。もっと昭和風に「作家志望を養う女の人」がいてもいいじゃないか。え、いるよね。そんで、でも、おれはなにもしないんだ。「構想はぼんやり浮かんでいるんですよ……、かなり面白いのが」とか言いつつ、「ちょっと競馬で気分転換してくるからお小遣いくれませんか? いつもごめんね」とか言って、一万円もらって近くの地方競馬場にでも行く。昼から。で、ビールとか飲んじゃう。晴れた空、砂塵を巻き上げて走るサラブレッド、色とりどりの勝負服、スタンドには人生に敗れた男たち……。夕方、おけらになって競馬場から出て、仕事帰りの女と落ち合って居酒屋で飲む。仕事の愚痴とか聞いちゃう。もしろん、おれは金を払わない。

 

……ベリー・ベリー・ナイス。すばらしい夢じゃないか。立派なヒモ生活が思い浮かぶ。

 

ただ、追い出されないような気づかいも必要だろう。そういうのに共依存する人もいるのはわかるが、DVとかは絶対にしない。というかできるタイプじゃない。言葉遣いも丁寧に、つねに優しく接する。癒やしの存在でなくてはならない。それで、一向になにもしないことについて苛つかれるのを相殺する。

 

家事とかもしないではない。というか、おれは「ものを片付ける」という性能に欠いているので、あまり部屋にこもらないほうがいいかもしれない。健康的に競馬場とかちょこざっぷとか図書館とかに行って、部屋をちらかさないようにする。掃除は苦手だが、ゴミ出しはもちろんする。洗濯という行為も嫌いじゃない。料理については、金と時間があればイナダシュンスケさんのレシピ本でも買ってなにか作るくらいのことはできるはずだ。金と時間があればスパイスカレーとかに凝るかもしれない。料理でご機嫌をとる。

 

夜の生活も適度にやる。過度がいいと言われたら、まだまだそれに応えるくらいのものはあるはずだ。がんばる。

 

休日とかは、朝からだらだらやったりして、そのあとランチとか食べに行く。公園とか歩く。べつに映画を観たって、美術館に行ったっていい。おれは人見知りのコミュニケーション苦手のわりに、親しい人を笑わせることはできる。話は弾む。夜は居酒屋に行く。「きみ、いい加減にどうにかしないと」くらいのことは言われるかもしれないが、「いや、まあなんとかなるよ」とか言ってごまかす。金は払わない。

 

……いいな、ヒモ。養われたい。でも、もうヒモという歳でもないだろうか。でも、なんか、世の中には昼間っからほっつき歩いてなにしているかわからないおれより年上のおっさんもいる。実は資産家かもしれない。でも、そのなかの何割かはヒモかもしれない。名刺交換したら「ヒモ」と書いてあるかもしれない。わりと女に寄生して生きている男もいるに違いない。ヒモの可能性は閉ざされたわけではないと思う。

 

ヒモ、いいな、ヒモだな、これからの時代は。be a freeloader、be a moocher。そのために高い意識が必要だ。高い意識でなんか才能のあるやつのfakeを演じる。死ぬまで演じきる。なにかできそうだと思わせる。

 

あー、物好きな◯◯◯◯◯に似た◯◯◯◯の◯◯なお金持ちの女の人が空から降ってこないものか。たまには降ってくるものだと思っているのだが。

 

 

……あ、こんなこと公表してたらだめじゃねえか。いや、そのくらいのふてぶてしさも必要というものだ。ヒモ道は長い。よく伸びる。というわけで、どうですか、そこのあなた、おれを養ってみませんか? え、いきなりそんなおつきあいはできない? 噂になると恥ずかしいから? じゃあとりあえず、Amazonでおれになにか恵んでみるというのはどうでしょう。ここのところ、酒はぜんぶ人の金です。あなたもどうですか。低アルコールも高アルコールもどっちでもいいです。あ、お恵みものは男の人からも絶賛受付中です(……何様?)。

 

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