流れよ我が涙、とスーパーのレジ係は言った

 

おれがいつも行くスーパー(調べればどこかすぐにわかるので書くがスーパーあおばだ)、昨日も会社帰りに買い物に寄った。店内はそこそこ混んでいて、適当なレジの列に並んだ。おれの番が来た。初めて見る女性の店員さんだった。年齢はどのくらいだろう。四十代半ばのおれくらいか、ちょっと上かちょっと下だろう。手書きの名札をつけていたが、「研修中」のバッジはつけていなかったように思う。

 

で、その店員さんのスピードにおれは度肝を抜かれた。四十年とちょっと生きてきて、これだけ速いレジの商品さばきを、おれは見たことがない。断言してもいい。それだけのスピードだった。あらゆる商品のどこにバーコードがあるのか把握しているように読み取りを外さないし、バーコードのない野菜を見てタッチパネルのボタンを押すのも速い。一瞬の迷いもなかった。

 

「なんだこれは!」と思った。そしておれは、この速度を台無しにしてはいけないと、素早く、そして丁寧にiPhoneのQUICPayを用意して、読み取り機が点滅すると同時にタッチした。レシートを受け取ってサッカー台に向かった。おれの動きにも無駄はなかった。少し安堵した。

 

そしてまた驚いた。カゴのなかの商品がピシッと整頓されているのだ。そりゃあべつに、研修中の新人だって、レジを通した商品をカゴのなかに乱雑に放り込むことはない。ただ、それにしても、あまりにも完璧に商品が整列していた。あの速度で、この丁寧さ、すごすぎる!

 

興奮したおれは、スーパーを出るとすぐにXにポストした。

 

 

FAは冗談だが、県大会3位くらいというのは本音だった。そして思い返すに、あれはもう全国クラスじゃないのかとも感じる。あれが全国のレベルか!

 

とはいえ、おれは家に帰って冷静に考えた。

 

 

そうだ、スーパーのレジの人にFAなんてない。むしろ、今の時代ありうるのは解雇だ。大きいスーパーはどんどんセルフレジになっているらしい(行かないのでよくわからない。あと、セルフの方式にもいろいろあるのだろうが)。そんな中、「もう今の時代あなたのような腕前は必要ないよ」となってしまったのかもしれない。

 

うーん、なんとも言えない。あまりに惜しい。技術が進歩することによって、プロの技術が不要になってしまう。……あ、これはもうおれの妄想の世界に入っているので。で、まあそれで、「必要がなくなった技術を持った労働者も新しく生まれた産業に流れていくんだよ」ということになるんだろうが、やはりどこか感傷として「もったいない」の心は残る。それがもう、具体的に、目の前で見てしまうと、「いやいやいや」という気持ちになってしまう。

 

もちろん、スーパーとて人件費の高騰だとか、そもそも人手不足とか、そういう事情があるに違いない。それを否定する理屈も思いつかない。いや、セルフレジもいいけど、店によって初見殺しなのは勘弁してほしいとか、言いたいことはあるけれど。

 

まあいずれにせよ、そんなことを考えてしまうほど、あのレジは圧倒的なスピードだった。時代とともに人の仕事も変わっていく。それはしかたない。だから、せめてものこととして、ここに記録しておく。