読まないことをすすめる『無学問のすすめ』

 

無学問のすすめ: 自分の頭で考える思想入門 (ちくま新書)

無学問のすすめ: 自分の頭で考える思想入門 (ちくま新書)

 

伊藤雄二やなくて伊東祐吏? とか思ってパラパラめくってみたら、三木成夫の胎児断頭図と「吉本隆明」の文字が見えて、最近の本なのにそんな話題してんのか、と思って読んでみた。

読むんじゃなかった。はっきり言って、なんというか、時間のムダだった。なにやら知の権威や学問というものを冷笑的にバカにするだけで、これといった新しさもなければ、独自の切り口もなかった。なにより、本人が「国語が苦手だった」とか言ってるのはどうでもいいが、ともかく血まみれになって言葉と斬り結んでいる緊張感がなかった。迫力がなかった。情念も感じられなければ、執念も感じられなかった。

いや、なにか東大出を学問バカ、秀才くんといって「(笑)」してやろうという、みょうな気持ち悪さはあったが、それだけだった。だいたい、あいつもこいつも東大出身だ、と名前を挙げたなかに高橋源一郎が入っているんだが、高橋源一郎は東大じゃねえよな。校閲からも見放されているのか。そんな細かいところはどうでもいい? いや、そんな細かいところくらいしか言うことのない本に思えた。本当なら途中でポイしてもいいが、新書なのでペラペラ読めてしまうので読んでしまった。まったく。

というわけで、まるっきり「腑に落ちた」感じのしない本だった。本書では吉本ばりに「脳」ばかりじゃなく「身体」言っているが、その身体性(?)みたいなところも響いてこなかった。おれは学が無い高卒やけれど、まあ、どうにも性に合わなかった。これがまた、きちんと大学というところを出て、「自分の考えを述べるすべ」を身に着けた人間、あるいはそれ以上さきに学問の世界を登っていった人間(大卒……卒論を書いた人間は自動車教習所に入所する資格を得て、博士号は自動車免許みたいなものらしい)にはなにか響くところがあるのかもしれないが、おれにはなかった。それだけのことである。以上。