篠原有司男〜ボクシング・ペインティングとオートバイ彫刻〜

神奈川県立近代美術館 鎌倉
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/museum/exhibitions/2005/shinohara/index.html
 次の日曜日(11月6日)までの展覧会だから、駆け込みになったよ。まあ、文化の日らしくてよかったんじゃないかな。で、ギューちゃんこと篠原有司男だ。だ、と言ったところで俺もよく知らなかったんだんけどね。それでも、「福山雅治ポカリスエットのCMをやっていた人」と聞いて、ああ、あれかと思い出したよ。なるほど、印象的なCM、というか、印象的なペインティングだったからな、あれは。あのCMをやっているときも、誰かアーティストだろうと思っていたけれど、なるほど今回その人の展示会に行ったわけだ。
 一言にどうだったかと言えば、「速さ」を感じたな。俺は芸術作品を見てうまい言いまわしなんてとてもできないが、とにかくそんな風に思ったな。その行き着く先がボクシング・ペインティングなのかもしれないが、あれはまあ、あとから完成品を見てもどうとは思わなかったよ、正直。そこから、‘アーティストとアートの作成’みたいな話になると、俺にはちょっとついていけないしな。そうだな、このギューチャンは、結構な理性派、なんていうとおかしいけれど、そういうところが根っこにもあるんだろうな。今回の展示でも二階のひっそりとした一角にそんなのが封じ込められていて、「お、デュシャンっぽい」みたいな作品(後で知ったが別の誰かのイミテーション・アートとのこと)があって、その次の作品にデュシャンをモチーフにした立体作品の設計図があったりしたっけな。
 でもまあ、とにかく理屈抜きの存在感だ。オートバイ彫刻を見てみろ、という話だ。圧倒されるね、この「モノ」の感じには。俺には本当のバイクの仕組みなどはよくわからないが、「これがバイクだ」ってその満ち溢れる感じがいい。そういえば俺は、これらバイクを見ていて荒木飛呂彦を思い出したな。ジョジョの作中作くらいのそういう感じを立体にしたらこんなんだろうな、みたいな。
 もちろん、絵の方もすごいよ。超大作『怪獣・イン・パリ』。アホみたいなでかさと勢い。バイクにしろこれにしろ、これは世界中のどこに持っていって、どんな人間に見せようと、「うわ」と思わせる何かがあるんだろうと思う。俺はそういうのが好きだ。あと、絵と言えば、『お母さん、あの女(ひと)蚊に刺されてる!』というタイトルのがあって、これはもう、笑ってしまったよ。「蚊に刺されてるだけで、これかよ!」と突っ込みたくなるな。強烈なボケだったよ。美術館でボケと突っ込みをしていいのかわからないけれどさ。
 うーんなんだろう、こういう展覧会は子どもに見て欲しいな。いや、こんなことを書くと、情操教育の手先みたいで嫌な感じだけど、そうだな、俺が昨日の俺でなく、小学生の俺が見たら、より一層スゲエ衝撃を受けたんじゃないかって思うんだな。なんかえらく歪んだピカチュウなんかもいるし、まあ、とにかくバイク見たら絶対喜んだぜ。もちろん、昨日の俺も喜んだけどな。喜んだと言えば、出口の先の最後の最後に『空海モーターサイクル』ってのがあって(http://www.new-york-art.com/shinohara-artist.htmここに写真あるな)、空海好きの俺は喜んだものだよ。「同行二人」って書いてあって、本人が同行二人でどうなるんや、みたいなあたりも狙いなのかわからん(「同行二人」はお遍路さんなどの装束に書かれる。一人であるいていても、御大師さまと一緒、という意味)が、そうか、手に持っていたのは筆だったか。燃えさかる護摩行かと思ったぜ。
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 その後、別館の方の『彫刻家のペーパー・ワークと彫刻』展まで足を延ばしたけれど、こっちはつまらなかったな。どうにも俺はこういう理性の芸術、冷たい芸術は苦手だ。「ハンガーとして使えそう」とか、「こないだ分解したハロゲンヒーターの部品とどこが違うんだ?」みたいな思いばかりする。俺の頭が悪いのと、教養が足りないのがいけないのだろうが、まあ、つまらないものはつまらない。「引っぺがした紙がアートですか、はぁ」ってなもんだ。せめて、本館の池に立ってる彫像みたいに、軽くチンコ立ってるくらいの面白味がほしい。ちなみに、美術館の案内パンフの地図にもその彫像のイラストが載ってるんだけど、立ち具合が随分違うんだ。この美術館に行く人が居たら、ぜひチェックしてもらいたい。