渋谷、表参道、原宿、新宿、2つのアートとiPadに触れること

 タイトルの通りである。超リア充の俺、本来の姿で登場。……うそくせー。
 つーか、東京というのはただそれだけでうんざりするし、それが都下でなく23区内というともう息苦しいし、かんべんしてほしいと思う。なにせ人間が多すぎるし、平均年齢が低い。子供のころから俺は若い人間が苦手だったし、俺は川崎競馬場くらいの平均年齢がいいんだ。ドブネズミ色のおっさんたちのいるところが好きなんだよ。

 ああ、そして、俺は思う。今、この日本という国に何かしらの悪い部分があるとすれば、それは東京のせいだ。この街の悪い粒子を吸い込んだ人たちのメディアが、ここから日本全土に向けて悪い放電をする。このろくでもない空気の悪さ、焦燥と疲弊、欲と悪が、国を覆って皆イライラして嫌な気持ちになる。
 ……こんなわけのわからぬことを考えてしまうのも、渋谷に降りたのが悪い。俺は湘南新宿ラインから降りるべきではなかった。そのまま、ラインの果て籠原まで行くべきだった。籠原には黄金の沃土と蜜の流れる河があるだろう。俺はそこで黄金羊毛を手に入れて、山の中に立ち返る。俺は籠原が何県にあるかも知らないが!

反東京宣言 - 関内関外日記(跡地)

 フハッ! 俺の考えることは5年経っても一緒、やはり籠原に行くべきだったのだ。黄金の沃土!
 とはいえ、つきあいというものもある。「親戚が原宿の画廊で作品を展示しているらしいから見に行く。また、以前仕事を頼んだことのある若いアーティストから展覧会の案内状が届いており、それが近くなので両方行く」のだ。


 ↑脳内はこの曲で。でも、俺の人生とこの曲の内容に重なるところ一切なし。

 というわけで、俺はできるだけ精神を閉ざして、頭の中で朝仕込んだ欅ステークスの馬券のことばかり考えていたのだけれども(20点三連単買って700円くらい儲けたよ!)、東京の自転車は高そうだ。俺はその地域のいろいろな意味での豊かさの物差しとして、自転車の質ってもんがあるんじゃないかと思う(そうとうに自転車脳の恐怖と地域差別感が混じってるんだけど)が、おまえこのあたりの自転車ときたら、小粋にワイヤーロックされている自転車ときたら、クロスバイクロードバイク、ピストバイク、しかもそれぞれなんか小粋に使い込んである、チューンナップされている、まったく、この、「自転車ブームなので昨日買いました」って感じじゃねえのな。
 なんというか、ある工程の上流と下流、末端みたいなものがあったら、やっぱりおおよその分野で東京(まあ、俺がここで「東京」って言ってるのは限られた部分であって、青ヶ島村とか含んでないんだけど)が上流にあるわけじゃん。したら、収入もその分でけえよな、とかさ。まあ、しかし、これだけの人間のクソ多さ考えたら、この東京の中の上流と下流もすげえだろうが、俺は横浜村の田舎から来たからよくわかんねーし。

 それで裏路地みたいなところに入ったら、そこもなんかおしゃれで高そうな店に高そうな人間、高そうな車、高そうな犬、うんざりしてしまう。それで道の名前が「ロハス通り」とか書いてあって、右足出せば「サスティ」、左足出せば「ナビリティ」、くるっと回って「ライフスタイル」とか音が出てきてどうしようかと思った。どっから音がしたって、足からに決まってんだろ、足から洗って、最後、頭だ。

 やっと目的地たどり着いて、行ってみたら、正直よくわかんね。よくわかんねで、われわれ戸惑ってると、中の人が説明してくれた。究極的な気まずさ。予習が足りねー。だいたい、招待してくれた人が招待状送ってきた人かどうかわかんね。俺は存在は聞き及んでいるだけで、面識は同行者の方があるんけど、お互いノーリアクションだし。
 で、なんか御記帳みてえなノートあって、「ツイッターのアカウントでいいので」などとおっしゃる。え、こういう文脈で「ツイッター」って人間が発声するの初めて聞いた。ドキっとする。なんか汗かく。この俺とこのアカウントのひも付けというか、そういうのの意識した。つーか、隣の人に内緒でやってんだ、なんかでバレたらどうすんだ、みてえな。いや、しかし、今は、東京は、そういう時代。やべー。ご遠慮して出る。
 出てしばらくして、同行者が「あの人はやっぱり面識のあるあの人ではないのか」などと言い出す。えー。それで、せっかくだから戻って確かめようってなって、じゃあその前にブログでも見ておくかって俺がiPhone取り出してうろうろしてたら、なんか声かけられた、そのアート建物の掃除のおばちゃん、あき竹城似。
 「展覧会見にきたの、面白いわよねー。そう、二階はいつも入れ替わるし、こないだも一生懸命運び込んでたわー。若い人は面白いこと考えるわよね。私も精神がリフレッシュしちゃう。ここ、中村メイコさんの息子さんも展覧会して、中村メイコさんも来るのよ。それに、中村メイコさんの娘さんいらっしゃるでしょ、あの人も来るのよ。ところであなたたちどこから来たの? 横浜、中華街があって、山と海があっていいわよねー」
 ……いや、マジ中華街の近くから来たんですよ、ところで中村メイコって誰だっけ? メイ牛山 などと世間話していると、展示の方になにか女性がひとり入っており、話し込んでいる。まあ、いいかと後にした。

 それで、表参道とか通る。ここは前に自転車で通ったことがあるが、しかしなんだ、いやはや。もうぐったりしてしまって、頭の中でペルーサが十回くらい日本ダービーを勝ったりしたんだけど、なんかソフトバンクの店があって、今ナウなヤングにバカウケiPadが置いてあるくさいので覗いてみた。
 なんだ、第一印象は「思ったより小さいな」というところであって、持ってみては「思ったより重いな」というところ。しかし、画面は「思ったよりでけえな」という感じ。パネルの表面は「思ったより指紋がついてるな」というあたりで、群がる人の人数は「思ったより少ねえな」というところ。もう東京の人間はみんなiPadを持っていて、今やブームはAPadとかiPedに移ってるのかもしれない。
 それで、やっぱりこれはなんつーか、端末単体としてどうってよりも、どう使うかみてえなところのもんだろう。それで、俺にとってはネットと電子書籍だろって思うんだけど、なんかこのサンプル機、ネット接続させてくれねえみたい。まあ、なんかこれ経由でガバガバエロ画像とかダウンロードされても困るに違いない。マジ、趣味の合わないやつとかいるし。
 それに、電子書籍もなんかiBooksだかなんだかが入ってるだけで、そのサンプルが英語の本だし、俺、デトロイト生まれのサンフランシスコ育ちのユタ州在住だけど英語読めないし、青空文庫リーダー入ってねえし、まあわかんなかった。つーか、べつにiPhoneあるもん、DELLのかっこいいパソコンも持ってるもん、俺。

 いや、しかし、俺あんまりApple好きじゃねえんだ。これは本当に。

 それで狂気の沙汰の竹下通りの横とか通って、もうひとつの画廊行って(こっちは国展的だったのでわかりやすかった)麦茶とかごちそうになって、明治神宮に足を踏み入れたりして、それで帰ってきた。

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 やっぱり俺には横浜くらいの密度が限界だ。いや、横浜っていっても、西口五番街くらいだとうんざりするのに十分だから、イセザキモールくらいで。イセザキモールはいいね。それで、俺に好まれた場所はさらに鄙びて沈むから。だから、東京はしばらく大丈夫だと思う。おしまい。