俺は裏切り者になりたい

 革命達成というまさにその日の夜、王族を射殺する役割を担わされた二等兵の俺は、くるり振り向いて同志を、党中央を片っ端から射殺して、美しい王子とともに馬で月の砂漠を逃げたい。
 反体制ゲリラ殲滅というまさにその日の夜、指導者たちを射殺する役割を担わされた二等兵の俺は、くるり振り向いて同僚を、上官を片っ端から射殺して、美しい女ゲリラとともに山中を逃避行したい。
 俺は裏切れるのならばそれでいいと思った。俺に思想もセクトもない。俺は裏切り者になりたい。俺はそんな夢を見た。