商店街の酒屋でラムを買う

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四月がthe cruellest monthならば、三月は一番やさしい月なのか。

今日は春のような暖かさだった。おれはもう、冬の芋焼酎の季節ではないと思った。ラムが飲みたくなった。

おれはラムを求めて本牧通りを間門に向かって走った。端の方にチェーンの酒屋がある。そこでラムを買う。キャプテン・モルガンを買う。そう決めた。強風に抗いながら、おれは本牧通りを走った。

途中で、スーパーマーケットに寄った。元は上州屋だったところだ。新しくなってから入っていない。ひょっとしたら、キャプテン・モルガンくらいあるかも? なかった。おれはまた自転車を漕いだ。元はイトーヨカドーだったところのスーパーなら、キャプテン・モルガンくらいあるかも?

ちょっと走って赤信号にひっかかった。ふと、左手を見ると酒屋だった。古い酒屋のようだった。まだ閉まってはいないようだった。おれは自転車を止めた。

店内では、奥の方でおばさんと誰かが大きな声で話していた。店の広さのわりにはガランとした印象だった。店舗で売るのがメーンではないのだろうか。

洋酒の一角を見た。スーパーのそれと同じくらいの品揃えだった。ラムはロンリコしかなかった。埃を被っていた。ロンリコ・ホワイトなど、なにか鳥の糞のようなものがついていた。虫の死骸かなにかだろう。

とはいえ、もう面倒くさいのでここでロンリコを買うことにした。カウンターに置く。カウンターのおっさんが気づかない。さっき、「いらっしゃいませ」って言っただろう。奥から変わらずに話し声。「あ」と意外そうな反応。千五百いくら。いくらの部分を一円玉で払う。おれは完全にキャッシュレスの世界で生きたい。カウンターのおっさん、瓶の埃をタオルで拭く。拭いて縦長のレジ袋に入れる。

また強風の中、帰る。

ロンリコを飲む。

おいしい。

キャプテン・モルガンより、おいしいかもしれない。

まったく、悪くない。