どういう感想を抱いていいのかわからない……映画『エル ELLE』

 

エル ELLE(字幕版)
 
エル ELLE [Blu-ray]

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 サスペンス映画なのか、ミステリー映画なのか、はたまたジェンダー映画なのか、おれにはさっぱりわからない。主人公が受ける暴力が主題でもあるだろうし、その生い立ちを巡る部分も重要ではあろうし、家族、会社、隣人という人間関係というものが根底にはあるだろうし、かといって生活ドラマであるはずもなく。

なにかこう、とてもリアルなものがそのまま放り出されたような気もするが、高そうなドイツ車に乗るセレブなゲーム会社の女社長というものの「リアル」をおれが解することができるわけもなく、もちろん、その過去の特殊性やフランスにおける男女関係や婚姻関係、家族関係もわかるわけもなく。

それでも、なんというか、「この話はどこに行くのか」というところで引き寄せられるところがあって、それでも「この話はここに来ちゃったのか」という自分の中での了解というものもなく、いや、いったいなんなんだ。

そして、おれは映画にはそのあたりの「なんなんだ」を求めるところがあって、あまりにもシュルレアリスムの観念的芸術をやられてもおもしろくはないが、この映画のように日常が描かれているけど日常とは言えない、なんかわからないがわれわれ人間の裏の部分を走り抜けていくような作品というのは、なんか好きなんだよな。

あとはなんだ、イサベル・ユペールと言われてもどんな作品に出ていたどんな女優さんかもしれないが、この役を見事にこなしきっていてすごいものがある。そして、作品全体もなにか配役から風景からカチッとハマっていて、唸らされるところがある。ドロドロしそうでいて、カラッとしている、妙なテイストがある。怒りと同時に、なにかユーモアみたいなものまで入り込んでくる。人間の生きるいうんは、人間の性いうんは、いったいどういうことなんだろうね、などと思ってしまう。まあともかく、ようわからんが、見てくれ、というところだ。以上。