- 作者: ソニア・リュボミアスキー,渡辺誠,金井真弓
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2012/02/16
- メディア: 単行本
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おれが自己啓発本、幸せ探し本を読むのは珍しい。そう思う人もいるだろう。いないかもしれない。おれはおれ自身、珍しいと思う。
なぜ、この本を読んだのか。それは、おれが興味を持つ進化心理学のなにかの本で、本書について触れられていたからだ。その進化心理学の本は、いわゆる一般人向け啓蒙書的なものだったが、進化心理学の本であって、あるていどは学術的なもののように思えた。このような学術的な本の著者が学術的に書かれているとしている本なので、ありがちなライフハック本とは違うのかな? と思った。ただ、表紙を見ると「同じかな」という思いは拭えなかった。あと、「まえがき」の1ページ目から「ー」と「―」の誤植があったので、不安は増した。
が、著者は、自分はリサーチの専門家だ、学術的なエビデンスをベースにしているという。自信たっぷりだ(参考文献・論文の一覧はないけれど)。そう言われれば、そういうものかと思って読み進めた。読み進めたら円グラフが出てきた。
この円グラフを十分に理解していただくために「100人の観客で満員になった映画館」を想像してみてください。この映画館にいるそれぞれが、あらゆる幸福度を体現しています。つまり、とても幸せな人もいれば、まあまあ幸せな人もいて、ひどく不幸な人もいるわけです。円グラフの右下の部分は、意外にも、人それぞれの幸福度の違いのうち50%が、遺伝で決定づけられた設定値に起因することを示しています。この発見は一卵性双生児と二卵性双生児に関する、現在進行中の研究から生まれたものです。その研究によって、次のような結論が導かれました。
人はそれぞれ特定の幸福の設定値をもって生まれてきます。その設定値は生物上の母親か父親、あるいは両方の親から受け継いだものです。それは幸福の基準になるもの、または幸福になれる可能性であって、もし大きな挫折を経験したり、また大成功を収めたあとでも、人はその基準点(設定値に戻っていきます。(p.32)
というわけで、(ほとんど、確実に)双極性障害の遺伝を父親から受け継いだおれという精神障害者は、不幸という設定値に確実に戻ってくるということが確定するわけである。この時点で、おれはもうこれ以上この本を読む必要がなくなったといっていい。行動で40%が決まるといっても、ある人間が40%幸福で、50%不幸という状態がありうるだろうか。おれには考えられない。おれがもし100人の映画観客だとしたら? という精神構造は……ありうるのだろうか。幸せと感じているか、不幸せと感じているかという「感じ」については、「そう思う」、「どちらともいえない」、「そう思わない」……まあなんにせよ、やっぱりそりゃ、それ一色ではないのか。
で、著者は40%の行動に注目して、行動しろというのだが、この「%」のたとえがようわからんのだ。おれは双極性障害というベースがあって、それが遺伝的なものとして、それがもたらす抑うつ、倦怠感、そしてそれによってすべてのやる気や積み重ねが一切合切流され尽くしてしまうという仕組みに、なんの影響があるのか、ということだ。
そういうわけで、おれは「おまえは12個やれっていっても無理だから、向いてるやつをやりな」というチェックシートなどやってみて、「内面的なものを大切にする」(スピリチュアルや宗教)、「身体を大切にする」(瞑想と運動)……この二つのポイントが高かった……と、「人を許す」、「考えすぎない、他人と比較しない」とか言われても、「まあ、そやろね、健常者は」というところに尽きるのである。尽きてしまったのである。
が、たぶん本書はそれなりのリサーチや文献の集積、そして実験(進化心理学にありがちな、大学生を使った簡単なテスト)をもとに書かれている。それなりに信じてもいいだろう。とはいえ、内容になにか目新しいものがある、というわけでもない。自己啓発とかにまるで興味のないおれでも「どっかで見たことあるわ」という話ばかりだ。だが、おそらくは、いろいろの文化や宗教でよいとされてきたものは、おおよそそんなに悪くないのだ、というところで納得がいく。他人に親切にしよう、人間関係を大切にしよう……。おれにとって、広い人間関係を築くのは大いに苦痛であり、不幸でしかないのだが。あ、だから、「得意なやつだけやれ」なのか。まあ筋は通っている。そんなところ。この手の本を読まないおれが言うので、ほかのそのような本がどうなのだかわからないが、まあ、いいんじゃないでしょうか。おれの役には立たなかったけれど。そんなところ。
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……たぶん、この本で言及されていたんじゃないかな。ちがったらごめん。