1997年1月の境勝太郎

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この間の土曜日、会社の大掃除で……下記参照。

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そこでおれが約20年前の「サライ」を持ち帰った理由というのは、実のところ境勝太郎のインタビューが載っていたからである。以下、「サライ」1997年1月23日号より気になったところをメモする。ちなみにこのとき境勝太郎76歳、この年の2月に調教師勇退予定。

僕は馬の血統を見て、きょうだいを調べるのがいちばんの楽しみでね。競馬は血統のスポーツで、サラブレッドというのは外見もそうだけども、性格も能力も遺伝の影響がすごく大きい。だから、普段からいろいろデータを調べて、これはと思う馬は生産牧場に“生まれたら教えてくれ”って電話をして、生まれたら実際に何度も見に行く。

まず、これである。調教師を退いたあとは、スポーツ新聞で馬体の評論などしていたが、血統をたいへん重視しているのである。なにせ、「生まれたら教えてくれ」ってのは、配合の段階から目をつけておく、ということだ。どうも境勝太郎というと、なんでもかんでもサクラの馬、というイメージで、そのサクラの馬もサクラの血統からという勝手な印象を抱いていたが、そればかりではなかったのである。あるいは、サクラの血筋を築き上げてきたのは境勝太郎、ということなのかもしれぬ。

そんな境勝太郎が手がけたサクラの血筋といえばサクラユタカオーからサクラバクシンオー。そのユタカオーの生誕時のエピソード。

あれが生まれた時は、牧場からすぐ電話がきてね。“先生、残念なことに栗毛なんです”って。その頃、栗毛は走らんっていわれたんだね。でも、僕は“毛色で、走るか走らんか決まるならラクでいいじゃないか、そんなの心配するな”って見に行った。そしたら、ホントにいい馬だった。

このあたりの話はウィキペディアにも載っている。

サクラユタカオー - Wikipedia

ウィキペディア先生によれば「栗毛」ではなく「栗毛のテスコボーイ産駒」ということらしいが、まあいいだろう。しかしまあ、芦毛なんかについてもそうだが、毛色で判断されて素質が開花しなかったサラブレッドなんてのもたくさんいたのだろうな、などと。今はなんだ、白毛は走る、とか言っていいような気がするが、さて。

でもって、大正9年生まれの境勝太郎、騎手時代の話。

ただ、僕らが乗っていた頃は、今の競馬とはぜんぜん違う。最近は日本もヨーロッパ並みになって“テンよし、中よし、終いよし”の馬でなければ勝てないわけ。でも、僕らの頃は終いだけのレースが多かった。だから、レースの運びも違うし、馬のスピードも違う。スピード感のある今のほうが、見ててずっと面白いんでないかな。今は、テンから行く馬がいて、中行く馬がいて、終いで来る馬がいる。これはやっぱり迫力が違うもの。

ほう、そうだったのか。日本競馬の黎明期、あるいは初期は終い重点のレースが行われていたのか。近年、といっても、いつからいつか曖昧で申し訳ないが、サンデーサイレンスの直仔が全盛のころとか、「スローペース症候群」とか言われて、あんまり面白くないという人もいたが、そんなところだろうか。むろん、馬のレベルにはものすごい差があってのことだが。でも、サクラシンゲキもいたし、サイレンススズカもいた。関係ないけど、エイシンヒカリは最後負けはしたけれど思うように逃げられていいレースをしたと思う。しかしまあ、サクラローレル年度代表馬のころの競馬……いけないな、おれが競馬を見始めたころの話、すべてがよく思えてしまう。

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そして境勝太郎アイテム。時計と印鑑を兼ねた蹄鉄形の指輪。これである。なにがなんだかわからん、ともいえる。とはいえ、「僕らは」といってるからには、どこまで合体してるかわからんけれども、指輪型印鑑、今の調教師もしているのだろうか。かっこいい。ちなみに、こないだ競艇か競輪を見ていたら、グランプリみたいのを買った選手が現ナマで一億くらい貰ってるシーンが映っててびっくりした。「賞金もらうのに」といっている以上、少なくとも1997年の中央競馬も現ナマだったのだろうか。

 まあいい、そんな境勝太郎古馬で一番勝ちたいのは有馬記念。そして4歳(当時)で勝ちたいのはダービー、という。

僕は昭和63年にサクラチヨノオーという馬でダービーをとったけれども、あの時は勝てるとは思ってもみなかった。第一、僕の前を通る時は半馬身負けていたからね。もともと、レース後半で一気に先頭に並び立つ、差して行く馬でないし、ああ負けたなと。ところがフトシが決勝点でステッキ振り回してたから、あいつ何してんだと思った。そしたら“境くん、勝ったよ、勝った”って声がして、それ聞いた時は、もう泣けちゃってねえ。僕、天皇賞は4回勝ってるし、重賞は50いくつ勝ってるけど、ダービーみたいな、あんな感激は知らないですよ。なにしろ、涙なんか流したことない、この境さんが、思わず泣いて、それどころか、腰が抜けて立てなくなっちゃった。

「あいつ何してんだ」て、さすがの小島太も2着で大暴れはするまいて。しかし本当にサクラチヨノオーは半馬身負けていたのだ、メジロアルダンに。それを差し返す。こんなことはめったにないだろう(と、動画サイトで確認するグレーゾーンなインターネット)。境さんも涙を流す、腰を抜かす。ちなみに、このダービーにはサッカーボーイヤエノムテキが出ていた。

ああ、それにしても、サクラもメジロも遠くなったものだ。いや、まだサクラは走っている。走っているが、やはり時代は変わってしまった。次はどんな時代がくるのか。もう社台を元にしたグループが栄え続けるのか。それともミュゼの時代が来るのか。来ないか。まあ稀代の個人馬主である金子真人HDもいるけれど、なんとか軍団、みたいなのをまた見たいなとも思うのである。そういうわけで岡田総帥の軍団が柴田大知を乗せてやってくるということで、トラストの馬券など勝って、北の方ではいい目を見たが、こないだはしくじった。そうか、サトノの時代がくるかもしれないな。まあ、おれがそれを見ることになるかどうかはわからないけれど。