北原照久「機械じかけのおもちゃ館」

http://www.hmk.co.jp/tenbo/omocha_kan/omocha_kan.html
 マリンタワー展望利用者は無料なので入った。上記リンク先にあるような古い、機械仕掛けのおもちゃが並んでいる。おもちゃといっても、宝石店のディスプレイ宣伝用のもので、それぞれのデザインに合わせたコピーがついている。消防車のおもちゃには「彼女のハートを燃やし続けるには美しいダイヤモンドが必要です」とか、馬で疾走する男のおもちゃには「彼は彼女へ美しいダイヤモンドを届けようと急いでる」など(もちょっとひねってたかも)。おもちゃの題材は西部劇風のものやインド風だったり、あるいは『不思議の国のアリス』や流線型ロケットが月に向かうSF風のものなどさまざま。
 そんなのを見ていて思い出したのがフィリップ・K・ディック。『パーマー・エルドリッチ〜』で主人公が取り扱うのは植民星に住む人が‘入り込む’人形とハウスだったし、『ザップ・ガン』でもそんなフィギュアが出てきたような。『ユービック』でくり返されるコピーなんかも上のに似ている。
 別にディックがこういったおもちゃを見てどうこうとか言う気はないけれど、ディックの育った時代はこういうのが動いていた時代だと思い、ちょっとハッとしたのだ。SF作品、特に優れた作品は、現代の目で見ても古びてはおらず、ある種の普遍性を備えている。それゆえに、現代の技術と比べて不自然なところが気になったりしてしまう。しかし、だ。それら作品が生まれた時代、それら作者が育った時代を考えると、本当にそりゃ大したもんじゃよー? まったくSF作家というやつは(以下キルゴア・トラウトの演説を引用しようと思ったが、手元にないし検索しても出てこないので諦めた)。
 話は戻って、この博物館、時刻表みたいなのがあって、分刻みにあっちのオモチャが動いたり、こっちのオモチャが動いたりする。古いもので、常時動かすのは無理だからだ。で、受付のおねーちゃんが分刻みで、部屋の中のお客さんに「一分後にこちらの壁側のおもちゃが動き出しまーす」などと呼びかけるのだ。忙しそう。頑張れ。正直、こういった古いアメリカおもちゃのテイストは自分の趣味ではないのだけれど、そこに魅入られた北原という人の思いは伝わってきた。ナイス。
 そんで、このおもちゃ館を出ると、巨大なガチャガチャのコーナーがある。二百個くらいガチャがある。壮観というか異様というか。ちゃんと最新のやつが入ってる。ちょっと前にネットで横浜でガチャでって話題を見かけたけど、ここのことか? 大きなお友だちむけ美少女ものみたいなのもあったりした。何か一個回そうかと思ってたけど、あまりの数の多さにやり過ごしてしまった。その先にはオモチャ屋と駄菓子屋があったが、物色だけして何も買わずに後にした。