http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20041027i213.htm
「自分探しの旅に出たい」。
このイラク邦人拉致事件のニュースは、昨日の朝のテレビではじめて知った。それを見ながら僕は、手元にある熟していないアボカドのことばかり考えていた。遠い国の政治も戦争や、この国の政治や経済ではなく、切ってしまった固いアボカドの方がよっぽど大問題だ。
香田証生という人は、どちらの側の人間だったんだろう。遠い世界のことが気になって、そこに本来の自分の姿があると思って旅立ったのか? 手元のアボカドを見つめるうちに自分を見失ってしまい、気づいたらあんなところにいたのか? これは、もしも本人が生きて帰ってきてもわからないかもしれない。
アボカドのことばかり考える僕でも、たまにはテレビに釘付けになる。"I don't want to die!"という韓国人の人質の悲痛な声は、今でも覚えている。あれは極限の叫びだ。果たして香田青年はどんな‘生きた証’を残すのか。僕がアボカドを見るたびに、切断された何かを思い出すはめになるのは御免蒙りたいものだけど。いや、それでも多分アボカドは食うな、絶対。