ブレイディみかこ『労働者階級の反乱 地べたから見た英国EU離脱』を読む

 

 それは2016年6月24日の早朝だった。

 「おおおおおおおっ」という配偶者の叫び声と共に、わたしは目覚めたのである。

 「離脱する、離脱するんだ、俺たちは……。オー・マイ・ゴーーーーーッド」

 自分が離脱に入れといて、「オー・マイ・ゴッド」もないもんだが、配偶者は雷に打たれたような顔でテレビの前に座り込んでいた。

というわけで、イギリスにて労働者階級の配偶者とともに暮らし、保育士として働くパンクなブレイディみかこさんによる「ブレグジット」本である。

とはいえ、ブレイディみかさん、政治学者でも社会学者でも歴史学者でもない。

 そんなわけで、よく理解できない事柄に出会ったときに人類がせねばならないことを、いまこそわたしもしなければならない、と思った。勉強である。

 英国の労働者階級はなぜEU離脱票を投じたのか、そもそも彼らはどういう人々なのか、彼らはいま本当に政治の鍵を握るクラスタになっているのか、どのような歴史を辿って現在の労働者階級が形成されているのか――。学習することはたくさんあった。この本は、その学習の記録である。

というわけで、本書は勉強の本だ。著者のパンクでロックでノー・フューチャーは影を潜めているといっていい。労働者階級の人々の暮らしっぷりも少なめだ。ただ、日本にとってイギリスというとアメリカや中国、朝鮮半島とは遠く、ブレグジットも遠い話ではあった。だから、そのあたり学べるところはあるだろう。

たとえば、EU議会でイギリスの極右政党UKIPが勢力を伸ばし、世界の右傾化とか言われながら、実のところ英国議会ではまったく議席が取れない(EUでは国益をガンガン主張してほしいけど、国内政治は普通にやってほしいというバランス感覚)だとか、そんなんは知らんかった。

知らんかったといえば、なんとなくブレグジットもトランプ旋風と一緒くたにされることが多かったみたいだが、イギリスの労働者階級はトランプをクソ嫌ってるとか、そのあたりも、「そうなのか」という感じ。

そして、章がかわりブレイディみかこ氏の身の回りの人へのインタビュー。職を転々として、金を貯めては世界を放浪する1955年生まれのサイモン(仮名)さん曰く。

「俺はいろんな国を旅したけど、組合が弱い国の労働者ってのは、やっぱりどこでも惨めなものなんだ。俺らが若い頃は、英国の組合はまだ強かった。俺は自分の国の組合に誇りを感じていた」

日本なんかどうなんでしょうね。組合、知らんわ。

と、そしてあとはひたすらに労働者階級の100年史について記されている。勉強の本なのだから真面目だ。地べたで勉強していても勉強は勉強なのだ。賢いひとなら「この経済政策の帰結を今の日本に当てはめると……」などと一席ぶてるかもしれないが、おれにはできません。そんなところ。以上。いや、ほんとに。

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……読み物としてはこちらの方が面白いでしょう。