初詣に行った

かんのんさま

 大船にある観音様に行った。大船観音http://www.city.kamakura.kanagawa.jp/stroll/scene/kanmon.htmといえば、あのあたりを電車で通ればいやでも目に入る、巨大ランドマークである。私は十年近く毎日大船駅を利用する毎日を送っていたのだが、この大船観音に行ったのは一度きりであり、このたび二回目の参拝と相成ったわけである。
 そう、意外に行く機会がないスポットなのだ、観音様は。行くには急坂を登らねばならんし(大した距離はないけれど)、登ったら登ったで拝観料三百円。どちらかといえば、遠くから見守っていただければありがたく、その場に行くという場所ではない。「初詣のようなイベント時は別ではないのか」とも思ったのだが、そもそも場所が悪い。大船駅から横須賀線で一駅となりの北鎌倉に行けば、寺院仏閣のてんこ盛り。湘南モノレールで江の島に行けば、江の島本島の江島神社(神社の場合「の」を表記しない)、すぐそばには日蓮上人ゆかりの竜口寺といった具合である。
 ちなみに、子どもの頃の初詣といえばその竜口寺か、手広の交差点の近くにある鎖大師であった。鎖大師はロジャースの対面にあって、池には鯉がいた。手広のあたりはモノレールで言えば湘南深沢から歩けないこともないが、車が一番である。それに対して竜口寺のあたりは車は不向き。なんならモノレールの目白山から歩くのがいい。目白山公園の上の仏舎利を拝んでいくのもいい。私は子どものころ「ぶっしゃり」というものを、一種の固有名詞、目白山の上にあるもの、と思っていた。
 閑話休題。私は十年かそこらぶりに大船観音に登った。坂はあっと言う間、寺内もあっと言う間である。観音様は近くで見ると、さすがに迫力があった。観音様の周りには、菜の花やサルビアの花がさみしく咲いており、なにやら野外暗黒舞踏の舞台のようであった(注:私は野外劇も暗黒舞蹈も観たことはない)。観音様の胎内に入ることもでき、十年前と同じでノートが置いてあった。ノートには願い事や悩みごと、この場の感想などがあった。まるで読み方のわからない外国の言葉も記されていた。外の灯篭にはミャンマー人の名前も多かった。この短い歴史の寺院にも、いろいろな歴史があるのだろう。私はろくでもないことしか書けないたちなので、何も書かなかった。
 おみくじを引いたら大吉と出た。しかし、文中に大吉の雰囲気無く、「何か突発的に幸運があるけど、突発的なものだから」という感じであった。私は一度そのおみくじを所定の場所に結びつけ、それから思い直してほどいて持ち帰った。