シャンディー・ガフ

カナダドライジンジャーエール1.5Lペットボトルラベルより引用

シャンディー・ガフ
シャンディー・ガフと呼ばれるカクテルをご存知ですか?イギリスのパブで古くから飲まれてきたカクテルで、ビールとジンジャーエールを半分ずつ割ったものです。ビールのカクテルって珍しいですよね。

 ジンジャーエールの1.5Lペットボトルをなぜ買ったのか。それには前段階があって、ちょっと前にジンを買ったのである。もちろん、コンビニで手に入り安価なGILBEY'Sの赤いラベルのやつだ。スピリット類はなんとなくストレートで飲む癖のある俺だけれど、ジンの香りを嗅いでいると流石に何かで割ってみようかという気になってくるのだ。そして、スーパーで安いジンジャーエールを見つけて購入したわけだ。
 一瞬コーラでもいいかな、と思ったけれど、あれはちょっと甘すぎるという気がした。それに、コーラで割る酒といえばカナディアン・ウィスキーだ。スコッチともバーボンとも違う、何だか知らない軽さを持つカナダのウィスキー。これがコーラに滅法合う。だけど、ここは一つそれほど甘くないやつがいい。
 甘くない炭酸飲料水で思い出すのはSMAPだ。「不味いジュースコン」なんてアンケートになると、必ずといっていいほど入ってくるものだが、俺は好きだった。これもやはりウィスキー割ったりするのにちょうど良かったと思う。もちろん単体でも好きだったけれど、ドクターペッパーあたりも好きな俺の味覚が好んだ以上、評価が低いのはやむを得まい。
 話をシャンディー・ガフに戻そう、シャンディー・ガフに。なんだか聞いたことあるようなないような響き。確かにビールのカクテルって珍しい。そういえば昔、父親に「焼酎をビールで割るのをホッピーという。労働者の酒だ」と教えられたことがある。その時は酒なんて飲まなかったころだから、ファミコンソフト『たけしの挑戦状』に出てきた「ほっぴー」とはそういうものかと思ったものだ。もちろん、ホッピーは今で言うノンアルコール・ビールのはしり。藤沢のオーケーというスーパーで安くホッピーを買うことができて、アルコールにすぐ参ってしまう俺は、沢山買い込んでそのまま飲んでいた時期があった。しかし、オーケーの酒売場は安かった。酒の量販店にも負けないくらい安かったような気がするな。
 話を再びシャンディー・ガフに戻そう。もちろん、珍しくジンジャーエールが手元にあるのだから試さない手はない。かといって、どんなものかわからないものに「ビール」を買うわけにはいかないので、人民を栄光の道に導かれる酒文化究極の守護者である石弘光大先生が忌み嫌う反文化的悪酒「発泡酒」で代用だ。本当は更なる安価を誇る「その他雑酒」にしようかとも思ったけれど、さすがに離れすぎるかと思い避けてみた。
 で、シャンディー・ガフはいかなるものだったか。なんというか、胃がダブダブになった、というのが第一印象。三百五十ミリの発泡酒を同量の炭酸飲料で割るのだから、ちょっと壮絶である。ここらあたり、「缶ビールなんて一晩に五本くらいは開けますよ」という人にはわからないかもしれない。肝心の味の方も、「薄まったビールあるいは薄まったジンジャーエール」という感じで、スピリットなどと比べてはるかに度数も少ないものだから、酔いの方も思いの外回らない。ただ、色合いなんかはちょっと素敵で、ビールでも強すぎるわ、という人にはいいかもしれない。
 さて、俺はこれを自室で打っている。コンポから流れる曲はくるりのアルバム。もちろん、ジンジャーエールからの凡庸な連想だ。そうだ、俺はいろいろな酒を飲んで泣いたり笑ったりしたいと思う。たまには思いっきり泣いたりしたいと思う。誰か遠くまで連れて行ってくれないか?